2019年4月から新たな在留資格「特定技能」で農業が外国人労働者を雇用できるようになりました。
今後、農業でどのような要件を満たせば外国人労働者を雇用することができるのかまた、注意点等ご説明したいと思います。
農業分野における人手不足の状況について
農林水産省平成30年11月発表では、農業従事者は、平成元年時324万人だったが、半数以下となり、平均年齢は66.6歳で高齢が進んでいると発表した。
また、農業者の減少・高齢化を背景に、経営規模の拡大等を積極的に行う農業者が増加し、その結果、農業の雇用労働力はこの10年で1.7倍(220,152人)に増えているが、農畜産業の有効求人倍率が全産業平均(1.46倍)を上回っている(農耕作業員1.72倍・養畜作業員3.11倍 H30年度)状況です。
農業分野における外国人労働者の受け入れについて
農業は深刻な人手不足の状態にあり、 今後、生産性向上、国内人材確保の取組を継続していくとしても、人手不足が完全 に解消される見込みとはなっていないところであります。
現在の外国人労働者受入状況
厚生労働省で平成30年10月現在で農業分野における外国人労働者が、この5年間で1.9倍となった。外国人労働者の内訳として増加のほとんどが技能実習生となり、27,871人(前年対比3,832人の増)となっています。
今後も農業分野は、深刻な人手不足の状態にあり、 今後、生産性向上、国内人材確保の取組を継続していくとしても、人手不足が完全 に解消される見込みとはなっていないところであります。
特定技能での外国人労働者人材の受入れ見込数
農業分野における向こう5年間の外国人労働者受入れ見込数は、最大3万6,500人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用するものとしています。
向こう5年間で13万人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、年1% 程度の必要労働者数の効率化(5年で1万1,000人程度)及び追加的な国内人材の確保(2023年までに40歳代以下の農業従事者を8万人程度確保)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっ ていない状況です。
特定技能として受け入れる方法として
受け入れたい方法として概ね下記内容を検討されていると思います。
- 初めて外国人労働者の受入れを検討している
- 技能実習生を引き続き特定技能外国人として受け入れ継続したい場合
- 過去技能実習生として受け入れ、現在は帰国している技能実習生をもう一度特定技能外国人として受け入れたい場合
初めて外国人労働者の受入れを検討している
初めて受け入れるため、まずはご希望に沿うような外国人材を探す上でご相
談するのが先決と思います。
ご相談先として
- 農業分野での技能実習生や特定技能で受入れ実績のある農協等(監理団体・登録支援機関)
- 最寄りのハローワークや民間の職業紹介所
- 海外にネットワークを持つ民間団体や現地コーディネーター
等にご相談となります。
引き続き特定技能外国人として受け入れ継続したい場合
技能実習2号修了者に特定技能で引き続き働いてもらいたい場合は、技能実習2号修了の2か月前になったら、最寄りの地方出入国在留管理局(地方入管)に、在留資格を「特定技能1号」に変更するための申請(在留資格変更許可申請)をしてもらうことになります。
在留資格変更許可申請の結果「在留資格変更許可」が出れば、外国人材は新たな「特定技能1号」として引き続き農業現場で働くことができます。
このケースでは、いったん母国に帰国する必要がありません。
帰国している技能実習生をもう一度特定技能外国人として受け入れたい場合
過去に技能実習2号を修了し、現在本国に帰国している者を再度特定技能制度の下で働いてもらいたい場合は、外国人材と雇用契約を締結後、最寄りの地方入管に、在留資格認定証明書の交付申請をしてもらうことになります。
※ 具体的な提出書類の詳細については、事前に最寄りの地方入管にお問い合わせください。
ここでは、初めて特定技能制度による農業分野での受入れについて説明したいと思います。
特定技能で受け入れる外国人材について
農業者が受入れ機関として直接外国人材を雇用する場合と派遣事業者が受入れ機関となり、外国人材を派遣してもらう場合の2つのケースがあります。
直接雇用形態の場合
農業者(受入れ機関)が外国人労働者の特定技能として直接雇用する場合です。
派遣形態の場合
派遣事業者が外国人労働者の特定技能として直接雇用し、農業者先に派遣する場合です。
JA等の場合
JA等が外国人材を雇用した上で、組合員等の農家から農作業等の業務を請け負い、外国人材にその業務に
従事してもらうといった働き方が可能となります。
この場合、JA等が地域内の複数の農家から請け負った業務に外国人材が従事することも可能ですが、作業の指揮命令は、個々の農業者が行うことはできず、雇用契約を結んだJA等が行うので注意が必要とされます。
特定技能での雇用期間について
農業分野での特定技能では、 5年間継続して働いてもらうのが可能となります。また、 農閑期等には帰国し、通算で5年間になるまで働いてもらう、のどちらも可能となります。
在留期間が通算5年を超えなければ、最初に雇用契約を結んだ農業者の下での雇用期間が終わった後、別の農業者と雇用契約を締結し、働いてもらうといったことも可能です。
※ただし、地方出入国在留管理局で新たに在留資格変更許可を受ける必要があります。
特定技能外国人が従事する業務
特定技能外国人が有すべき技能水準
- 「特定技能1号」(在留期間の上限が通算5年、家族の帯同は基本的に認められないなどの要件あり)での受入れが可能で、以下の試験に合格した者又は農業分野の第2号技能実習を良好に修了した者が対象です。
技能水準:農業技能測定試験(耕種農業全般又は畜産農業全般) - 日本語能力水準:国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上
詳しくは、下記を参照下さい。
主たる業務
- 耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等)
- 畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等)
に主として従事しなければならず,栽培管理又は飼養管理の業務が従事する業務に含まれていることが必要です。
農業分野においては,耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等)又は畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等)に従事する者を受け入れることとしていることから,試験等で立証されたこれらの能力を用いて幅広く業務に従事する必要があります。
関連業務
分野別運用要領に記載するとおり,当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。
・ なお,特定技能所属機関において耕種農業又は畜産農業の業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務は,例えば,次のものが想定されます(注)。
(注)専ら関連業務に従事することは認められません。
- 特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物を原料又は材料の一部として使用する製造又は加工の作業
- 特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)による農畜産物の生産に伴う副産物(稲わら,家畜排泄物等)を原料又は材料の一部として使用する製造又は加工の作業
- 農畜産物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物が含まれる場合に限る。)の運搬,陳列又は販売の作業
- 農畜産物を原料又は材料として製造され,又は加工された物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物を原料又は材料の一部として使用し,製造され,又は加工された物が含まれる場合に限る。)の運搬,陳列又は販売の作業
- 農畜産物の生産に伴う副産物を原料又は材料として製造され,又は加工された物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)による農畜産物の生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用し,製造され,又は加工された物(たい肥等の肥料,飼料等)が含まれる場合に限る。)の運搬,陳列又は販売の作業
- その他特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)で耕種農業又は畜産農業の業務に従事する日本人が通常従事している作業(畜産農業と耕種農業を複合経営している特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)において畜産農業の技能を有する特定技能外国人が耕種農業の作業に従事する場合,冬場の除雪作業に従事する場合等)等
その他業務関係
- 特定技能外国人が従事する業務には特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が受託して行うものを含みます。
- なお,特定技能外国人が従事する業務が特定技能の在留資格に該当するかは,在留期間中の活動全体を捉えて判断することとなります。
- 農業者(農家・農業法人)に雇用される場合だけでなく,特定技能外国人が主として従事する業務(①耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等)又は②畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等))を自ら行う,又は農業者から請け負って行う,農業者等を構成員とする団体(JA等)に雇用されて業務に従事することもできます。
特定技能での受け入れるための準備について
受け入れる外国人材が決まったら、いよいよ具体的な手続を進めることになります。
実際の受入れまでの大まかな流れは、以下のとおりとなります。
特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧
特定技能届出一覧について確認して下さい。
各参考様式についてダウンロード(外部リンクJITCOサポート)をしてご利用下さい。
農業分野の固有の基準(告示)
雇用経験等
- 農業者等が特定技能所属機関として1号特定技能外国人を直接雇用する場 合,当該農業者等は,過去5年以内に労働者(技能実習生を含む。 )を少なく とも6か月以上継続して雇用した経験がなければなりません。
- また,労働者派遣による場合には,派遣先は,過去5年以内に労働者(技 能実習生を含む。)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験があるか, 又は派遣先責任者講習その他労働者派遣法における派遣先の講ずべき措置等 の解説が行われる講習(例えば,都道府県労働局が実施する派遣先向けの講 習等)を受講した者を派遣先責任者として選任していることが必要となりま す。
「支援計画」の内容について
農業者が外国人材を雇用する場合、外国人材が日本で 安心して生活できるよう、きめ細や かなサポートをし ていただくことに なります。支援内容について、具体的にどのように行うかを定めた「支援 計画」を事前に作成する必要があります。
具体的支援等はこちらをご覧ください。
新たに外国人人材を受け入れるための在留資格は、二つあります。特定技能とは特定技能の概要について単純労働を含む業種に外国人を受け入れる新しい在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」が、2019年4月1日より施行されました。[…]
支援を登録支援機関に委託する
外国人材への支援は、農業者自身が行うか、登録支援機関 に委託することができます。
具体的支援等はこちらをご覧ください。
登録支援機関について登録支援機関とは、受入れ機関(企業)から委託を受け、1号特定技能外国人支援計画の全ての業務を実施する者のことです。受入れ機関(企業)は、特定技能1号外国人に対し支援を行わなければなりませんが、その支援を全て委[…]
農業特定技能協議会
目的について
農業特定技能協議会は、特定技能制度の農業分野での適切 な運用を図るために設けられた協議会です。
農業者の皆様が外国人材の受入れ機関となった場合は、本 協議会に入会いただくことで、今後、協議会が行うこととし ている以下の活動を通じ、外国人材の受入れをより適正かつ 円滑なものとすることが可能になります。
内容について
- 初めて農業分野の特定技能外国人を受け入れた場合には,当該特定技能外国人の入国後4か月以内に,農林水産省が設置する農業分野における1号特 定技能外国人の受入れに関する協議会(「農業特定技能協議会」 )に加入し, 加入後は農業特定技能協議会に対し,必要な協力を行うなどしなければなり ません。
- 入国後4か月以内に農業特定技能協議会に加入していない場合には,特定 技能外国人の受入れができないこととなります。
- また,農業特定技能協議会に対し,必要な協力を行わない場合には,基準 に適合しないことから,特定技能外国人の受入れができないこととなります。
- 労働者派遣による場合には,派遣先は,農業特定技能協議会に対し,必要 な協力を行うものでなければなりません。
- 特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援計画の実施を登録支援機関に 委託する場合には,当該登録支援機関は,農業特定技能協議会に対し,必要 な協力を行うものでなければなりません。
農業分野の外国労働者人材の在留資格制度の比較
特定技能制度 (出入国管理及び難民認定法) | 技能実習制度 | 国家戦略特区 (農業支援外国人受入事業) | |
在留資格 | 「特定技能1号」⇒就労目的 | 「技能実習」⇒実習目的 | 「特定活動」⇒就労目的 |
在留期間 | 通算で最長5年 (在留期間中の帰国可) | 最長5年 (技能実習期間中は原則帰国不可) ※4年目の実習(技能実習3号)を開始する際に、1か月以上帰国させる必要 | 通算で最長3年 (在留期間中の帰国可) |
従事可能な業務の範囲 | ・耕種農業全般 ・畜産農業全般 ※日本人が通常従事している関連業務(農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業等)に付随的に従事することも可能 | ・耕種農業のうち 「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」 ・畜産農業のうち 「養豚」「養鶏」「酪農」 ※農作業以外に、農畜産物を使用した製造・加工の作業の実習も可能 | ・耕種農業全般 ・畜産農業全般 ※農作業以外に、農畜産物等を使用した製造・加工、運搬・陳列・販売の作業も可能(ただし、農作業が主) |
技能水準 | 「受入れ分野で相当程度の知識又は経験を必要とする技能」(一定の専門性・技能が必要) ※業所管省庁が定める試験等により確認。ただし、技能実習(3年)を修了した者は試験を免除。 | – | 「農業支援活動を適切に行うために必要な知識・技能」 (一定の専門性・技能が必要) ※①技能実習(3年)を修了した者又は②農業全般についての試験に合格した者が該当。 |
日本語能力の水準 | 「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本」※試験等により確認。ただし、技能実習(3年)を修了した者は試験を免除。 | – | 「農業支援活動を行うために必要な日本語能力」 ※①技能実習(3年)を修了した者又は②農業全般についての試験に合格した者が該当。 |
外国人材の受入れ主体 (雇用主) | ・農業者等 ・派遣事業者(農協、農協出資法人、特区事業を実施している事業者等を想定) | 実習実施者(農業者等) ※農協が受入れ主体となり、組合員から農作業を請け負って実習を実施することも可能 | 派遣事業者 |
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外国人労働、技能実習制度について制度の概要外国人技能実習制度(以下「技能実習制度」という。)は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。技能実習期間は最長で5年とさ[…]