外国人の働き手、どう頼る 「特定技能」保護は不十分なまま 衆院選【朝日新聞2021年10月28日】

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来日2年目の技能実習生が、瓶詰めされたサケを包装するラインで働いていた=東北地方

世界で人材の争奪戦が起きる中、外国人をどう受け入れていくのか、衆院選での議論は総じて低調だ。課題が多い技能実習制度に代わり、新たな在留資格「特定技能」が設けられたが、働き手の保護は依然不十分で、受け入れ側も使いにくい実態がある。日本は、このまま「移民」の議論を避け続けていくのだろうか。

東北地方の食品加工業で働くミャンマー人女性(37)は11月末、別の県の食品加工業に転職する。「給与が高いから」。3年の技能実習をへて、特定技能の在留資格を取得した。

技能実習は原則、仕事を変えられない。特定技能は県をまたぐ転職もできる。この企業では、すでに数人が特定技能を得て賃金が高い関東地方に出ている。

ただ、この企業は「実習生がいなければまわらない」(担当者)。従業員の平均年齢は約100人の日本人が55歳で、約25人のミャンマー人は26歳。実習生は貴重な働き手だ。実習生を副班長にして賃金を上げたり、社長と交換ノートをして思いを書いてもらったり。人材をつなぎとめる工夫が欠かせない。

東北地方の別の食品加工業では、実習生を日本人と同じように勤務や生活態度、リーダーシップなどで評価。日本語能力も考慮し、多く賃金を払う仕組みを採り入れた。

■「給与足りない」相談次々

待遇の改善が期待された特定技能だが、働き手を守れているとは言えない。

「9月は1日しか休んでいないのに、21日分の給与しか払われなかった」

NPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊(じほう)代表のもとに10月末、SNSを通じて、農家で働く特定技能のベトナム人から連絡があった。8月末から、いずれも実習生出身の20人以上の相談にのっている。吉水さんは言う。「特定技能の場合は自分で労働基準監督署などに行かざるをえないケースもあり、非常にハードルが高い」

制度上、実習生は受け入れ企業以外も、仲介役の監理団体や国の認可法人である「外国人技能実習機構」が責任をもつ。しかし、特定技能は企業が自社内に支援の責任者らを置くことも認められている。社内の人に、社内の問題を相談しなくてはいけない。

吉水さんは「特定技能は日本社会を自ら生き抜くしかない、脆弱(ぜいじゃく)な状況に置かれていることが多い。問題があれば支援や保護につながれる運用や制度設計の見直しが急務だ」と話す。

企業側にも不満が残る。東北地方の企業の担当者は「若い単身者は日本人同様、都会に出たがる。覚悟をもった家族連れに来てもらい、移民のように根付いてもらう方が中長期でメリットが大きいのでは」と言う。

■移民政策、議論避ける日本

日本は長く「移民政策」を避けてきた。移民の社会統合に苦労した欧州の経験などから、どう共生していけばいいのか不安が根強いからだ。本気で受け入れるなら、子どもの教育や医療、社会保障なども踏み込んだ政策が必要になる。

実習生も特定技能に移れば通算10年働ける。造船などの一部業種では、熟練者は就労期間に上限もなく、要件を満たせば家族の呼び寄せもできる。

日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は「実習生は帰国する前提で受け入れており、日本語を学ぶ機会は不十分だ。特定技能を得たら、結果的に定住する可能性は高い。定住を想定した受け入れ体制の整備が必要だ」と指摘する。

衆院選で各党は外国人受け入れをめぐる公約を掲げる。与党側は人手不足の解消策として「活用」「確保」を打ち出し、野党側は外国人が住んでいくための制度づくりに重点を置くのが目につく。ただ、活発な論議は交わされていない。(藤崎麻里)

◆キーワード

<特定技能> 2019年4月に設けられた外国人の在留資格。農業や介護、建設など14分野で最長5年働ける。政府は長く外国人の単純労働を認めず、実習生や留学生らが事実上の受け皿となってきたが、特定技能で初めて明示的に受け入れることになった。政府は当初5年間で最大約34万5千人を見込んだが、取得者は今年6月末で2万9144人にとどまる。技能実習を経た人が8割を占める。取得には日本語を含めた試験を通るか、技能実習を3年間修了する必要がある。

朝日新聞デジタル

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