外国人雇用、捜査の手 在留カード、原本確認しない雇い主に 偽造事案、後絶た【朝日新聞2021年8月21日】

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在留カードに搭載されたICチップをスマホで読み取り、画面に表示された情報と、在留カードの原本を照合。違う点があればカードは偽造となる(画像を一部加工しています)

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外国人を雇ったり、外国人に仕事を任せたりしている企業や雇い主が、在留資格の管理を徹底するよう迫られている。在留カード=キーワード=の原本を確認していないなどとして、使用者側が出入国管理法違反(不法就労助長)の疑いで警察の捜査を受けるケースが出てきた。専門家からは、今後も法的責任を問われるリスクがあるとの指摘が出ている。

昨秋、オーバーステイのベトナム人男性を企業に派遣していたとして、東京都内の会社と代表者が警察に書類送検された。会社の幹部によると昨春、この男性の雇用を継続する際、在留カードの写真をメールで送ってもらい、在留資格や期限を確かめた。警察の捜査で、カードが在留期限を更新したように書き換えられていたことが分かった。

会社は「偽造を見抜けなかった」と釈明したものの、警察から「故意であろうと過失であろうと、原本を見ていなければ違反」と言われたという。入管法は雇用者らに、できる限りの手段を尽くして外国人の在留資格をチェックするよう求めているが、具体的な方法は明記されていない。

外国人就労問題の専門家によると、これまで問題視された不法就労助長の事案は、雇う側が非正規滞在の外国人と知っていたり、意図的に在留カードの原本を確認せずに働かせていたりする例がほとんどだった。会社と代表者は不起訴(起訴猶予)となったが、会社代理人の杉田昌平弁護士は「在留カードの原本を確認せずに就労させたら、刑事処分を科せられることもありうる」と受け止めた。

警察庁によると、2020年に、在留資格や在留期限を書き換えたりした偽造カードを持っていたなどとして外国人が検挙されたのは790件で、過去最多だった。同庁は「偽造カードを使った不法就労の事案が後を絶たないので取り締まりを強めている」(国際捜査管理官)としている。

■派遣受け入れ企業も

国内の外国人労働者は約172万人(昨年10月末時点)。雇用している事業者は26万7千カ所(同)で、前年より2万5千カ所増えた。外国人の就労手続きに携わる機会が多い複数の行政書士は「全般的に在留資格に関する雇用者の意識が低い」と口をそろえる。

事案として目立つのが、外国人を雇って企業に派遣している人材派遣会社のケース。不法就労助長罪が確定したら派遣事業の許可が取り消される。朝日新聞の調べでは20年度は10社が許可を取り消された。前年度、前々年度は各4社だった。

昨年12月には大手食品メーカーの子会社の人材派遣会社が、在留期限が切れたベトナム人の元技能実習生を食品工場に派遣していたとして、不法就労助長の疑いで書類送検され、後に起訴された。

派遣会社から外国人労働者を受け入れている企業(派遣先)の法的責任も今後、注目されそうだ。外国人雇用問題に詳しい山脇康嗣弁護士は「派遣先も在留カードの原本を確認する必要がある」と指摘。不法就労助長罪の適用対象は「不法就労活動をさせた者」であり、外国人と雇用関係にある場合に限らないと解釈できるからだ。

ただ、原本を確認している受け入れ企業はほとんどないのが実情。このため山脇弁護士は、原本が未確認だとして捜査を受けた今回のケースが明らかになったことについて、「影響は非常に大きい」という。

警視庁は6月、オーバーステイのベトナム人らを不法に働かせたなどとして、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」を運営していた日本法人「ウーバージャパン」(東京都港区)と代表を不法就労助長の疑いで書類送検した。同容疑で運営会社側が立件されたのは初。警視庁によると、在留資格をきちんと確認していなかったとみられる。

ウーバーイーツには10万を超える飲食店などが登録。ウーバー側は配達人を雇用しておらず、配達人と飲食店が配達業務委託の契約を結んでいる、という。

元法務省入国管理局長の高宅茂氏は一般論としたうえで、宅配代行サービスと配達員との間に雇用関係がない場合でも、就労が認められていない外国人の配達員に対して、店が優位的な立場を利用して「ここに配達して、お金をもらってきて」などと指示してそれを行わせれば不法就労をさせたことになり、不法就労助長罪やその共犯となる可能性があると指摘する。(織田一)

◆キーワード

<在留カード> 日本に3カ月を超えて在留する外国人に交付される身分証明書。氏名、生年月日、国籍、住所、在留期限、認められた活動範囲を示す「在留資格」などが記されている。16歳以上は顔写真が載る。

在留資格の変更や在留期間の更新などのたびに交付される。

在留資格は

(1)制限がなく働くことができる「永住者」「定住者」など

(2)認められた範囲で就労できる「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」など(3)

原則として就労できない「留学」「研修」など――の3グループ計29種類ある。

朝日新聞デジタル

 外国人を雇ったり、外国人に仕事を任せたりしている企業や雇い主が、在留資格の管理を徹底するよう迫られている。在留カード=…