「直撃」失踪ベトナム人元技能実習生を救う「地下銀行」主宰者【JBpress2021年8月20日】

「安価な労働力」求める日本経済のシワ寄せ被った外国人の拠り所

*写真はイメージです

外国人技能実習生の失踪が増加し、社会問題化している。警察庁によれば、昨年、犯罪に関与した外国人実習生の検挙数は前年比786人増の2889人で、統計を取り始めた2012年以来最多だという。

国籍別に見ると、最も多かったのはベトナム人の2202人で検挙数の7割を占めている。彼らを始め、ベトナム人の元技能実習生たちが足繁く通う施設があった。

前回の拙文「失踪したベトナム人技能実習生、遁走先で聞いた『意外な真実』」では、2年半ほど前に来日して北関東にある会社で働いていた、ベトナム人の元技能実習生「ユキさん」の話を紹介した。

(参考)失踪したベトナム人技能実習生、遁走先で聞いた「意外な事実」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66084

借りた「日本への渡航費用」を返済しつつ親元へ仕送り

ユキさんが働いていたのは、とんでもないブラック企業だった。心身ともに追い詰められた彼女は、その会社から遁走して在留中国人が経営する「チャイナエステ」で働いている。

来日前、彼女は渡航費用や紹介料などで100万円の借金を背負っていた。ところが、来日前には20数万円の給与を約束されていたのに、日本に来て働いてみると家賃やら光熱費やらが引かれて実際に手元に残るのは月額5万円程度だった。借金返済はほぼ不可能だった。しかも朝から晩までの長時間労働で休日は月に1~2日程度。

ユキさんはたまらずその会社を逃げ出した。現在は、知り合った中国人男性が経営する「チャイナエステ」で働いている。その仕事だって楽ではないはずだ。

だが、ユキさんは笑顔でこう語っていた。

「オ金ヲ貯メテ借金ヲ返シナガラ、家族ニ送金シテイマス」

借金返済や送金のための資金は、文字通り彼女が身を粉にして働いたカネであることは容易に想像が付く。しかし、どうやって母国へ送金しているのか。

ベトナムへの送金は「地下銀行」経由で

実は、前回は紹介出来なかったが、彼女は“逃亡者”でありながら、ある銀行のキャッシュカードを持っていた。

ご存じの通り、日本人でも以前ほど容易に銀行口座を開設することはできない。それは金融庁がマネーロンダリングやテロ資金供与の防止のため、銀行業界に身分証明書の提出などを求めさせるように指導しているからだ。

ユキさんに銀行口座を開設した経緯を聞いてみた。

「前ノ会社ニイタ時、社長サンニ銀行ヘ連レテ行カレマシタ。ソコデ書類ヲ沢山書イタラ、数日後ニ社長サンカラ通帳トキャッシュカードヲ渡サレマシタ」

つまり、彼女の給与振り込みのために作られた口座だったわけだ。実は、金融庁はマネーロンダリングやテロ資金供与の防止を強化する一方で、銀行界へ円滑な外国人技能実習生の銀行口座開設を促している。

ただ、その元外国人技能実習生たちが作った銀行口座が“オレオレ詐欺”やマネーロンダリングに利用されていると言うのだから、何とも皮肉だ。

話をユキさんの送金に戻そう。彼女は、“逃亡者”なので、日本の銀行を使うのはリスクが高いのではないのか。

再びユキさんに尋ねてみた。

「別ノ銀行。新宿ニアル銀行デス。今ノ社長サンガ紹介シテクレマシタ」

今の社長とは、ユキさんが働く「チャイナエステ」を経営するリュウと名乗る在日中国人男性だ。キャッシュカードを持っていることも驚きだったが、ベトナムでへの送金はそれとは別の銀行を利用しているのだという。

彼女への取材に同席していたリュウさんに銀行名を問うと、

「日本の金融当局には認められていない、いわゆる“地下銀行”です」

と苦笑しながら流暢な日本語で答えた。「地下銀行」の響きにがぜん興味がわいてきた。

「地下銀行の責任者を紹介してもいいですが、一人で行くのはチョット危ないかもしれません。私も一緒ならば・・・」(リュウさん)

思いのほか、当りが柔らかだった地下銀行主宰者

数日後、リュウさんに“ガードマン”になってもらって一緒に訪れたのは、新宿区内にある雑居ビルの一室だった。むろん、ビルの外に地下銀行の看板はなく、ビル内にある部屋の入り口には日本語学校と思しき看板がある。どうやらワンフロアを“学校”が借りているようだった。が、不思議なことにその日は生徒の姿を一人も見かけることはなかった。