失踪したベトナム人技能実習生、遁走先で聞いた「意外な事実」【JBpress2021年7月15日】

日本の雇用先での待遇、現在の生活、そして潜伏生活を助ける人物

来日する外国人技能実習生が増加している。厚生労働省「外国人雇用状況」(今年1月発表)によれば、昨年10月末時点で外国人労働者は172万4328人に上回り、統計を開始した2007年以降、過去最高を記録した。

国別ではベトナム人が最も多く、44万3998人と全体の25.7%を占めている。昨年10月の調査時点で、それまでトップだった中国を抜いている。

ところがそのベトナム人技能実習生の失踪が相次ぎ、社会問題化している。入出国在留管理庁(以下=入管)の統計では2020年の外国人技能実習生の失踪者数は5885人で、そのうちベトナムが3741人と最も多かった。

伝手を辿って逃走したベトナム人技能実習生に接触

関係省庁も、相次ぐベトナム人技能実習生の失踪を放置している訳ではない。技能実習制度を監督する外国人技能実習機構は今年6月18日、「送り出し機関」と呼ばれるベトナムの人材派遣会社4社からの新規受け入れの停止を発表したのだった。

受け入れ停止の理由は、この4社を通じて来日したベトナム人技能実習生の失踪が多かったからだ。

だが、失踪の原因はベトナム側の問題だけなのか。そして、姿を消したベトナム人たちは一体どこへ行ったのか。

失踪した元技能実習生のベトナム人に話を聞こうと思い、ツテを頼って、ある「仲介者」に辿り着いた。その仲介者が取材場所として指定したのは東京都江東区内にあるアパートだった。

そこは築30年超の古ぼけたアパートの一室。インターホンを押して紹介者の名前を告げると、笑顔で出迎えてくれたのはTシャツ、スウェット姿で、まだ表情に幼さの残るベトナム人女性だった。

年収の2倍以上の手数料を払って来日

「コンニチハ」

カタコトの日本語で挨拶してくれた女性はユキと名乗ったが、むろん本名ではない。なぜ、彼女がユキと名乗ったかは後で説明しよう。

ユキさんは、受け入れ中止処分を下されたベトナムの「送り出し機関」を通じて、2年半ほど前に来日。彼女が来日費用として、「送り出し機関」へ支払った金額は日本円で100万円以上に上ったという。

ベトナム政府は、「送り出し機関」が受け取る手数料の上限を約40万円と定めている。だが、その規定が遵守されていないのは彼女のケースを見ても明らかだ。

ちなみに、ベトナム人の平均年収は約40万円。彼女は、年収の2倍以上の借金を背負って母国を後にしたことになる。

来日後、ユキさんを受け入れたのは北関東にある会社だったが、とんでもないブラック企業だった。

ユキさんの話では、来日前に約束されていた賃金は月額20数万円だったが、実際に支払われたのは半額の10万円前後。しかも、そこから家賃や光熱費などの名目で差し引かれて、手元には僅か5万円ほどしか残らなかったのである。

毎日13時間労働、休みは月に1~2日

技能実習生の就労期間は通常3年(最大5年)。ユキさんは、借金返済はおろか、母国への送金など夢のまた夢で、日々の生活にも窮するほどだった。

当時、彼女がどんな仕事をしていたかは身元が明るみになるのを避けるためにも控えるが、「毎日、朝8時カラ夜9時マデ働イテイマシタ。休ミハ月ニ1日カ、2日。社長サンカラハ、イツモ怒ラレテイマシタ」(ユキさん)。

低賃金、長時間労働、そして社長からのパワハラ。ユキさんは、心身ともに追い詰められて1年あまりでその会社から逃げ出したのである。

(参考写真)2019年6月、地方のニット工場で働くベトナム人技能実習生。本文の内容とは関係ありません(写真:ロイター/アフロ)

JBpress(日本ビジネスプレス)

ベトナム人技能実習生の失踪が相次ぎ、社会問題化している。失踪の原因はベトナム側の問題だけなのか。そして、姿を消したベトナ…