外国人留学生、就労週28時間の「壁」 もっと働きたいのに【上毛新聞2021年7月14日】

分厚い雲が空を覆い、小雨がぱらついていた。今月上旬の午後、群馬県前橋市のJR前橋駅前にマイクロバスが停車しては外国人が乗り込み、去って行く。アルバイト先への送迎の風景だ。「卵を割ったり野菜の皮をむいたりして、弁当のラーメンを作ります」。当日の仕事内容を教えてくれたホアン・バン・トアンさん(20)は10人ほどの外国人と共に車両に乗り込み、工場へ向かった。

■勉強続けるため

トアンさんは同市内の日本語学校に通う留学生。ベトナム中部の農村部の貧しい家庭に生まれ育ち、昨年11月に来日した。

5人きょうだいの末っ子で、1人だけ中学校を卒業した。家族や親戚からの大きな期待を背負って日本に来た。努力を惜しまず、アパートの部屋にある日本語学習ノートは5冊になった。農業の技術を学び、母国に貢献することが夢だ。

しかし、「生活は苦しいですね」とトアンさん。学校は原則午前中で終わるため、午後から夜の時間帯に週3回、西毛地域の弁当製造工場で働く。就労制限を守って週に24時間程度勤務するが、稼ぎは月9万~10万円がやっと。このうち学費で月5万7000円、家賃で1万6000円が消える。手元に残る現金は限られ、インスタントラーメンで空腹をしのぐ毎日だ。

来日する際に100万円の借金をしたため、両親には仕送りなどは頼れない。「『週28時間』は日本のルール。だから守らなければならない」としつつも、「ちゃんと勉強を続けていくため、本当はもっと働きたいという気持ちもある」と打ち明けた。

■資格外活動

日本への渡航費に加え、日本語学校や専門学校に通うために借金を抱えた留学生は多い。学費や生活費を捻出するには働く必要性が生じるが、こうした人たちの「壁」になっているのが入管難民法に基づく就労制限だ。留学生のアルバイトは資格外活動とみなされ、週28時間以内(長期休暇中は週40時間以内)に制限される。

就労目的での留学を防ぐため、出入国在留管理庁は留学生の労働を規制している。だが、週28時間の労働時間を超えて働き、アルバイトを掛け持ちするケースは後を絶たず、制度と現実とのひずみが浮き彫りになりつつある。

留学生や、技能実習生ら外国人材を支援しているDSinJapan(伊勢崎市)の山本雄次社長(37)は「制限内のアルバイトでは生活できない留学生が相当数いる。経済的な困窮が、犯罪や学校からの失踪につながる」と指摘する。

■ダブルワーク

ある東南アジア出身の留学生(20代男性)は取材に、週28時間超の労働をしていると明かした。

男性は昨秋から、二つのアルバイトを掛け持ちする「ダブルワーク」をしている。労働時間は週40時間以上で、収入は月に15万円程度。法令違反が発覚すれば、査証(ビザ)の更新が認められないケースもあるが、学費が高く、働かなければ日本で学び続けることが困難だとした。

そして、淡々と話を続けた。「入管に見つかるのは怖いけど、生活していくために仕方がない。みんなやっています」

政府のグローバル戦略の一環で多くの外国人留学生が来日し、その数はこの10年で大きく増えた。県内の2019年の留学生数は約7000人で、08年の7倍に。「高度人材」として企業などに採用される大学生らがいる一方、豊かな暮らしを思い描いて学びながら、生活に困窮したり、就職活動につまずいたりする留学生は少なくない。夢を追い、たどり着いた本県で、悩み、苦しむ留学生たちの現状を取材した。

【メモ】厚生労働省によると、アルバイトとして国内で働く外国人留学生は昨年10月末時点で約30万6000人に上り、外国人労働者の約2割を占める。主に学費や生活費を稼ぐために働くが、コンビニや工場、飲食店など人手不足感が強まる中で企業が「労働力」としての留学生に依存している側面もある。

上毛新聞

 分厚い雲が空を覆い、小雨がぱらついていた。今月上旬の午後、群馬県前橋市のJR前橋駅前にマイクロバスが停車しては外国人が…