日本政府が気づかないふりをする、外国人技能実習生への「労働力搾取」の実態【現代ビジネス2021年7月12日】

米国「人身売買報告書」が指摘したもの

米国が厳しく批判

日本は外国人技能実習制度を「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」。

米国国務省は7月1日に発表した「2021年版人身売買報告書」でこう指摘した。同報告書では、日本政府の対応が“十分ではない”として、厳しく批判している。

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国内にいる外国人技能実習生(以下、技能実習生)は2011年には14万3308人だったが、2019年には約3倍の41万972人にまで急増している。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、増加ペースは低下しているものの、2020年6月末で40万2422人と、2020年通年では2019年を上回る見込みだ。(表1)

技能実習生については、様々な問題が指摘・発覚している。

厚生労働省の「外国人技能実習生の実習実施者に対する平成31年・令和元年の監督指導、送検等の状況」によると、労働基準関係法令違反(以下、労基法)が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9455事業場のうち6796事業場(71.9%)に上っている。

例えば、

(1)月100時間を超えて違法な時間外労働を行わせた
(2)作業に制限時間がある危険な作業に対して、制限を超えて時間外労働を行わせ、加えて、健康診断を実施していない
(3)賃金の不払い、時間外労働の対する割増賃金の不払い
(4)使用する機械の安全対策など労働災害に対する安全性の確保を実施していない

など具体例には“枚挙のいとまがない”。

法令違反の事業場は7割も

違反が認められた6796事業場のうち、2035事業場(21.5%)が労働時間、1977事業場(20.9%)が安全基準、1538事業場(16.3%)が割増賃金の支払、1061事業場(11.2%)が賃金の支払での違反であり、最低賃金の支払でも469事業場(5.0%)が違反していた。

こうした労基法違反が蔓延する中で、技能実習生が労働基準監督機関に是正を求めた申告件数は、2019年で107件にとどまっている。

“言葉の壁”や申告手続きなど、様々な要因により、技能実習生が“泣き寝入り”しているのが実態だ。(表2)

技能実習生に対する、重大・悪質な労基法違反で労働基準監督機関が検察庁に送検したのは、2019年はわずか34件でしかない。(表3)

「2021年版人身売買報告書」は日本を4段階中の2番目である「Tier(ティア)2」の評価に据え置いた。

Tier 1は政府が人身売買の排除のためのTVPA(米国人身売買被害者保護法2000)の最低基準を完全に満たしている国、Tier 2は政府がTVPAの最低基準を完全に満たしていないが、それらの基準を遵守するために重要な努力をしている国という評価だ。

日本政府の対応が十分ではない

TVPAは人身売買について、(1)商業的な性行為が強制、詐欺などによって行われ、または18歳に達していない性的な人身売買、(2)服従、債務での束縛、奴隷制を目的とした武力行使、詐欺または強制を通じて、労働またはサービスのための人の募集、収容、輸送、提供または取得、と定義している。

そして、日本に関する報告では、「日本政府は人身売買の撲滅に関する最低限の基準を満たしてはいないが、大きな努力をしている」とした上で、外国人技能実習制度に対して「外国を拠点とする人身売買業者と国内の業者が外国人労働者を搾取するために悪用し続けた」と厳しく批判。

「日本政府の対応が十分な抑止ではない」と指摘し、「政府に被害者を把握して保護するという政治的意思が引き続き欠けている」として、政府のよる監視強化や厳罰化を求めた。

人身売買報告書について報告したブリンケン米国務長官/photo by gettyimages

報告書では、例えば技能実習について“強制労働”が指摘されている。

その要因としてあげられているのが「債務での束縛」だ。技能実習生の出身国では、日本の技能実習生に参加するため、その国の募集機関が技能実習生に高額の手数料を課しているケースが多数見られる。

こうした事態を防止するために日本政府はアジアなどの14ヵ国と技能実習制度に関する協定等を結んでいるが、実質的には効果を発揮していないと指摘されたのだ。

また、強制労働として、技能実習生のパスポートなど個人書類を没収や暴力、あるいは賃金の没収や劣悪な住環境、移動の自由の制限など様々な具体例を取り上げている。

その上で、これらの事態に対する日本政府の「政治的意思の継続的な欠如」をあげ、こうした問題はNGOなどにより報告されているにも関わらず、「日本政府は積極的な捜査を行ってない」とし、対応の不十分さを指摘している。

さらに、報告書では技能実習生の監理団体や実習先を監視・管理する「外国人技能実習機構」の人員不足などを指摘し、十分の適切な対応が行われていないことにまで言及している。

国際貢献が人権問題になっていないか?

この報告書の内容について、加藤勝信官房長官は7月2日の記者会見で、「米国の国内法の基準に照らし、独自に策定されたものだ。政府として意見は述べない」と突っぱねている。

外国人技能実習制度は、技能実習の適正な実施および技能実習生の保護を図ることにより、企業などでの人材育成を通じた技能等の母国への移転により国際協力を推進することを目的として開始された“国際貢献”だ。

その国際貢献策が人身売買報告書で、強制労働などを指摘された。

この制度の背後には、「人材育成を通じた技能等の母国への移転」を謳いながらも、実際には少子高齢化による労働人口減少の対策として、外国人労働者を国内で活用する目論見がある。

学校でのいじめ、職場などでのハラスメント、LGBT(性的少数者)への差別など国内には様々な人権・差別問題がある。こうした中で、技能実習制度が人身売買報告書で強制労働などの指摘を受けたことは、非常に重い。

政府は人権問題、差別問題に対して本腰を入れて取り組むべきだ。

マネー現代

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