外国人労働者、技能実習【農業】に関する制度

外国人労働、技能実習制度について

制度の概要

外国人技能実習制度(以下「技能実習制度」という。)は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。
技能実習期間は最長で5年とされ、外国人技能実習機構から認定を受けた「技能実習計画」に基づいて、技能等の修得・習熟・熟達を図ります。
農業分野においても、全国の農業生産現場で多くの技能実習生を受け入れており、耕種農業や畜産農業の技能実習が行われています。

技能実習が行える職種(農業の場合:2種6作業)

職種作業内容
耕種農業施設園芸
温室やビニールハウス等の施設を利用して行う園芸作物の栽培作業
畑作・野菜
畑(露地)で行う作物を組み合わせた周年栽培作業
果 樹
果樹園(温室等の施設利用を含む)を利用して行う果樹(その果実が食用に供される永年作物)の周年栽培作業
畜産農業養 豚
豚を家畜として飼養する作業(繁殖作業、育成作業、肥育作業を含む)
養 鶏
採卵鶏(うずら、アヒル等は除く)の飼養及び採卵作業
酪 農
乳牛(将来の搾乳を目的とする子牛を含む)の飼養及び牛乳の生産作業

外国人労働者、技能実習の受入れ状況

厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、令和元年10 月末現在の外国人労働者数は、「農業、林業」において35,636人(うち農業が35,513人)と農業、林業に従事する外国人労働が増えているのが現状です。ただ、技能実習については、厚生労働省からの発表が無く、外国人労働の推移にて仮に全体数として技能実習が80%とした場合、28,410人が技能実習の在留資格として活動しているものと思います。

農業において多くの技能実習生の受入れが行われている。労働力としての外国人材の受入れは国際貢献という技能実習制度の本来の趣旨とは異なるが、技能実習計画に基づく作業を技能実習生が行うことにより、事実上、農業、の現場が支えられています。
そのため、技能実習制度は、「労働力不足で悩む農業の救済策として機能」してきた側面もあり、実習生がいなければ作業が回らないという現場もあると思います。技能実習制度はそのような人材確保に苦しむ現場を支える役割を果たしてきたと思います。

技能実習の区分と在留資格

技能実習の区分は、企業単独型と団体監理型の受入れ方式ごとに、入国後 1 年目の技能等を修得する活動(第 1号技能実習)、2・3 年目の技能等に習熟するための活動(第 2 号技能実習)、4・5 年目の技能等に熟達する活動(3 号技能実習)に分けられます。
第 1 号技能実習から第 2 号技能実習へ、第 2 号技能実習から第 3 号技能実習へそれぞれ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能実習評価試験(2 号への移行の場合は学科と実技、3 号への移行 の場合は実技)に合格していることが必要です。

技能実習の区分と在留資格

企業単独型団体監理型
入国 1 年目(技能等を修得)在留資格「技能実習1号イ」在留資格「技能実習1号ロ」
入国 2・3 年目(技能等に習熟)在留資格「技能実習2号イ」在留資格「技能実習2号ロ」
入国 4・5 年目(技能等に熟達)在留資格「技能実習3号イ」在留資格「技能実習3号ロ」

農業技能実習評価試験

技能実習1号(1年目)」から「技能実習2号(2・3年目)」・「技能実習3号(4・5年目)」へ移行す るためには、(一社)全国農業会議所が実施する「農業技能実習評価試験」の「初級」及び「専門級」を受験し、 合格しなければなりません。
また、技能実習2号や同3号の修了時にも、専門級や上級の受験が義務化されました

試験実施機関
(一社)全国農業会議所
対象職種・作業 (2職種6作業)
・耕種農業……「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」
・畜産農業……「養豚」「養鶏」「酪農」
試験の方法と 基準
・試験科目……学科試験及び実技試験からなります。
・使用言語………全て日本語で行います。初級、専門級、上級試験は、口語体ひらがな、分かち 書き(語と語の間を開けた書き方)で、ヘボン式ローマ字(初級のみ)を併記 します。初級のみ試験問題を読み上げます。
・試 験 場……技能実習生の居住地等を勘案して決定します。
受験の申し込み
外国人技能実習機構に「受験申請連絡票」を提出してください。 (様式は外国人技能実習機構のホームページからダウンロードできます)
受 験 料 (毎年度当初に決定)
15,400円(学科試験5,100円、実技試験10,300円)<2020年3月現在>。
なお、 再試験に際しては、受験料以外に試験実施にかかる実費等を徴収することがあります
合格者等の決定
受験者に対しては試験結果通知書、合格者に対しては農業技能実習評価試験合格証明書を交 付します。不合格者から希望があれば、学科試験、実技試験の再試験を1回に限り行います
試験問題 (初級、専門級、 上級)の概要
・学科問題………農作業における作物栽培管理、畜産管理、安全衛生等について、初歩的(初級)、 基本的(専門級)、一般的(上級)な知識を有しているかを問います。
・実技問題………各種農作業について、安全の確保を図りつつ、一定時間内に正しい手順で確実 にできることを求めます。

外国人労働、技能実習生の受入れと監理団体について

技能実習制度の監理団体について

技能実習生の受入れは、受入機関の別により、「企業単独型」と「団体監理型」の 2 つのタイプがありますが、農業分野においては「団体監理型」による受入れとなります。
農業協同組合や事業協同組合などの監理団体が受入れ、傘下の「実習実施者」(組合員・会員)で、技能実習を実施します。
個人の農業者や農業法人が技能実習生を直接受け入れることはできず、監理団体のみとなっています。

監理団体の許可には、「一般監理事業」(技能実習1号・同2号・同3号の受入れで5年間可能)と「特定監理事業」(技能実習1号・2号の受入れで3年間可能)の2つの区分があります。
優良な監理団体(一般監理事業)には、 受入期間の延長や人数枠の拡大が認められます。
許可後でも仮に違反があった場合は、改善命令や業務停止命令、許可の取消しの対象となります。
監理団体の許可が取り消されると実習監理が継続できなくなり、許可の取消しの日から5年間は新たな監理団体の許可が受けられなくなります。

監理団体に係る主な許可基準

  1. 営利を目的としない法人であること。
    商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人、公益財団法人等
  2. 監理団体の業務の実施の基準(下記Ⅰ~Ⅳが代表例)に従って事業を適正に行うに足りる能力を有すること。
    Ⅰ 実習実施者に対する定期監査(頻度は3カ月に1回以上)
    ア 技能実習の実施状況の実地確認
    イ 技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること
    ウ 在籍技能実習生の4分の1以上との面談
    エ 実習実施者の事業所における設備の確認及び帳簿書類等の閲覧
    オ 技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認
    Ⅱ 第1号の技能実習生に対する入国後講習の実施(適切な者に対しては委託可能)
    Ⅲ 技能実習計画の作成指導
    Ⅳ 技能実習生からの相談対応(技能実習生からの相談に適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を実施)
  3. 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること。
  4. 個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じていること。
  5. 外部役員又は外部監査の措置を実施していること。
  6. 基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること。
  7. 優良要件への適合<第3号技能実習の実習監理を行う場合>。
  8. ①~⑦のほか、監理事業を適正に遂行する能力を保持していること。
    ◦監理費は、適正な種類及び額の監理費をあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収
    ◦自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせてはならないこと
    ◦適切な監理責任者が事業所ごとに選任されていること

技能実習生の受入人数枠について

基本人数枠

会員企業(組合員)の常勤職員数受入可能な人数枠
301 人以上常勤職員数の 20 分の1
201 人以上  300 人以下15 人
101 人以上  200 人以下10 人
51 人以上  100 人以下6 人
41 人以上   50 人以下5 人
31 人以上   40 人以下4人
30 人以下3人

ただし、常勤職員に技能実習生(1号、2号、3号)は含まない。また1号実習生は常勤職員の総数、2号実習生は常勤職員数の総数の2倍、3号実習生は常勤職員数の総数の3倍を超えることはできません。

団体監理型の人数枠

第1号(1 年間)
基本人数枠
第2号(2 年間)
基本人数枠の2倍
優良な実習実施者・監理団体の場合
第1号(1年間)第2号(2年間)第3号(2年間)
基本人数枠の2倍基本人数枠の4倍基本人数枠の6倍

農業における常勤職員数の取扱い

農業における常勤の職員については、申請者である農家が個人事業主である場合にあっては、確定申告をした前年分の収支内訳書(農業所得用)のうち「事業専従者の氏名等」欄に氏名の記載があるかなどを確認するほか、当該専従者の就労状況について具体的な説明を求めた上で、外国人技能実習機構が常勤の職員として認めることが適当か否か判断することとなります。

外国人技能実習生の実習実施者(受入農業者・農業法人)の役割

外国人技能実習生は、日本人の労働者と同様に労働関係法令が適用されます。実習実施者は、労働関係法令の遵守をはじめとして、認定技能実習計画に従って実施しなければなりません。
また、技能実習法等において、以下の受入基準や要件が定められています。

実習実施者に係る役割

  1. 事業所ごとに常勤の技能実習責任者を配置して総括管理し、実習開始後は速やかに外国人技能実習機構にその実施を届け出ること。
  2. 常勤の技能実習指導員及び生活指導員を事業所ごとに配置していること。
  3. 技能実習計画を許可された監理団体の指導により作成し、外国人技能実習機構の認定を受けること。
  4. 帳簿書類や技能実習日誌を作成して備え付け、技能実習終了後1年以上保存すること。
  5. 技能実習生への賃金が、日本人と同等額以上であること、及び習熟度に応じてアップすること。
  6. 1年ごとに実施状況報告書を外国人技能実習機構に提出すること。
    ※ 他に、技能実習生の宿舎確保、労災保険等の成立措置等。

外国人労働、技能実習生の要件

(責務)技能実習に専念し、技能等の移転に努めなければならない。

  1. 18 歳以上であること。
  2. 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
  3. 修得した技能等を帰国後活用し、本国で農業に従事する予定があること。
  4. 本国において農業に従事した経験を有すること、又は日本で実習する特別な事情があること。
  5. 本国の国・地方公共団体等からの推薦を受けていること。
  6. 第3号移行には、第2号修了後又は第3号開始後に 1 カ月以上の一時帰国をしていること。
  7. 同じ段階の技能実習を過去に行っていないこと。

とされています。

労働関係法令等の遵守

技能実習生には、日本人の労働者と同様に、わが国の労働関係法令等が適用され保護されます。

実習実施者は、労働関係法令の遵守をはじめとして、雇用関係に基づく適正な賃金の支払いや社会保険等への加 入の必要があります。
農業に関しては、労働基準法の労働時間、休憩、休日等に関する規定など、一部項目の適用除外がありますが、 他産業並みの労働環境を確保するために、外国人技能実習制度では基本的に労働関係法令等の規定を遵守・準拠し ます。
(平成12年3月農林水産省通知「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」
(平成25年3 月農林水産省通知「農業分野における技能実習生の労働条件の確保について」)

  1. 雇用契約の締結(雇用条件書の交付)
    技能実習生との間で、雇用契約を締結し、実習内容、労働時間、休憩時間、休日、賃金等については 母国語を併記した書面の交付により明示する。
  2. 就業規則の作成
    1事業所で常時10人以上の労働者を使用する農家等は、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け 出る。10人未満の農家等でも就業規則を作成するよう努める。
  3. 強制貯金の禁止
    労働契約に付随して貯蓄の契約、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
  4. 賃金の適正な支払い
    本人に直接、通貨で全額、毎月一定期日に支払う。
    口 座払いは書面による本人の同意が必要。通帳・印鑑・ キャッシュカードは本人保管のこと。
    宿泊費・光熱費等の控除額は、実費を超えてはならない。
  5. 労働時間について
    原則1日8時間、週40時間まで。変形労働時間制を採用する場合は、労使協定又は就業規則その他 これに準ずるものによる定めをする。
    ※健康管理の観点から、すべての人の労働時間の状況を客観的に把握しなければならない。
  6. 休憩について
    労働時間が6時間を超える場合は、少なくとも45分
    労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間
  7. 休日について
    原則、毎週少なくとも1日。
    年次有給休暇は、採用後6カ月以上、出勤8割以上で10日を付与。その後、1年経過毎に休日が増える。
    ※年5日の年次有給休暇の取得を、雇用者側に義務づけられた。
  8. 時間外、休日、深夜の割増賃金
    所定の手続きにより、法定労働時間の原則を超えて労働させることができるが、割増賃金を支払うこ とが必要(なお、農業の場合であっても深夜労働に関する割増賃金の規定は適用除外とならない)。
    時間外労働:通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
    休日労働:通常労働日の賃金の計算額の3割5分以上
    深夜労働(午後10時~午前5時):通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
    ※残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間とし、臨時の特別な事情がなければこれを 超えることはできない。
  9. 適正な宿舎の確保
    技能実習制度運用要領の基準を満たすこと。
  10. 社会保険(医療保険、年金保険)
    法人経営の場合は健康保険・厚生年金が強制適用。個人経営の場合、健康保険・厚生年金保険、国民 健康保険・国民年金のいずれかに加入すること。
  11. 労働保険(労災保険、雇用保険)
    法人経営の場合は強制適用。常時5人未満の従業員を使用する個人経営は任意加入であるが、労災保 険、雇用保険への加入が必要。

罰則規定

技能実習法では、技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け違反に対する罰則規定が定め られています。

監理団体では、①暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体 の自由を不当に拘束する手段によって 技能実習を強制する行為については、1年以上10年以下の懲役又 は20万円以上300万円以下 の罰金とし、②違約金等を定める行為(47条1項) ③…貯蓄金を管理する契約を締結する行為、④旅券等を保管する行為(48条1項) ⑤私生活の自由を不当に制限する行為(48条2項) ⑥法違反事実を主務大臣に申告したことを理由とする技能実習生に対する不 利益取扱い(49条2項)では、6カ月以下の懲役又は30万円 以下の罰金とされています。

実習実施者では、労働基準法に同様の規定あり (5条)では、1年以上10年以下の懲役又 は20万円以上300万円以下 の罰金とし、労働基準法に同様の規定あり (16条・18条1項)④…旅券等を保管する行為(48条1項) ⑤私生活の自由を不当に制限する行為(48条2項) ⑥法違反事実を主務大臣に申告したことを理由とする技能実習生に対する不 利益取扱い(49条2項) では、6カ月以下の懲役又は30万円 以下の罰金とされています。

参考資料

  1. 「農業分野における外国人技能実習制度の概要」一般社団法人 全国農業会議所
  2. 「農林水産業における外国人材の受入れ 」農林水産委員会調査
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