(取材考記)ベトナム実習生の記事「失踪村」で届いた善意 日本で働く外国人との共生探りたい 平山亜理【朝日新聞2021年6月4日】

日本に働きに来た多くのベトナム人技能実習生がなぜ実習先から逃げ出すのか。どうやって暮らしているのか。どんな問題が背景にあるのか。多くの失踪者に取材し、紙面とデジタルで報じた記事「失踪村」に多くの反響をいただいた。「元実習生たちに渡して」などと朝日新聞や支援団体に合わせて7人から35万円以上のお金も届いた。

奈良県の女性は「日本でこんな事があるのかとびっくりした」と手紙につづり、孫の成人式用に積み立てているという15万円を同封してくれた。

多かったのは、コロナの集団感染が起きたクルーズ船でも働き、記事で大きく紹介したブー・バン・ズンさん(36)への支援だった。明記されていたものは本人に渡し、それ以外は今後の活動に役立ててもらうよう支援団体に寄付することにした。

日本人からの善意を受け取り、ズンさんは「とてもうれしい」と笑顔を見せた。一部をベトナムの家族に送り、残りは同じように行き場を失ったベトナム人を保護している埼玉県本庄市の「大恩寺」などに寄付したそうだ。

苦しんでいるベトナム人たちへの読者からの温かい気持ちには感謝したい。ズンさんの笑顔を見て、私も少し救われる思いがした。ただ、記事で紹介した人が助かれば、この問題が解決するわけではない。今の日本には無数のズンさんがいる。

年に2回しか給料をもらえなかった。就寝時に走り回るネズミに足をかまれた……。そんな体験談を聞き、これが21世紀の日本で起きていることかと驚いた。実習が適正に行われているかを管理するため国が設けた「外国人技能実習機構」に相談しても、「そんなことで電話をしてくるなと叱られた」と絶望する人も少なくない。

コンビニに並ぶ色鮮やかなお弁当、スーパーに並ぶカット野菜や加工済みの肉や魚、安く売られている靴下などの衣料品……。そうした商品の多くは外国人の労働で成り立っている。ベトナム人だけでなく、日本で働く外国人も同じ社会で生きる人間として受け入れていきたい。そのためにはどうしたらよいのか、読者のみなさんと一緒に今後も考えていきたい。

(甲府総局〈前東京社会部〉)

朝日新聞デジタル

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