逃げた実習生「その後」の人生 藤元明緒監督「海辺の彼女たち」 映画大好き!【朝日新聞2021年4月30日】

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「海辺の彼女たち」

職場を逃げ出した3人のベトナム人技能実習生の「その後」をたどる、映画「海辺の彼女たち」が東京のポレポレ東中野などで5月1日から順次公開される。実話をもとに、外国人女性の生き様をリアルに描いた作品だ。

ベトナム人のアン、ニュー、フォンは3カ月働いた実習先から逃げ出し、ブローカーを頼りに雪深い港町にたどり着く。不法就労という状況におびえながら郷里の家族のために働くが、フォンが体調を崩してしまう。彼女には秘密があった。

製作のきっかけは、監督の藤元明緒(あきお)の体験だ。ミャンマー出身の妻とともに、日本のビザに関する情報を発信していたSNSにメッセージが届いた。「今から逃げたい。怖いけど、周りの人は逃げて自分だけ残っている」

送り主は実習生のミャンマー人女性だという。中部地方の工場で早朝から深夜まで働き、時給は300円だと訴えた。藤元はなんとか対応しようとしたが、連絡が途絶えてしまった。「ずっと頭に残っていました」

実習生は逃げ出した後、どう暮らしているのか。彼らを支援するシェルターなどに取材した。人間らしく生きるための選択がしづらい実習生たちの状況は、人ごとに思えなかった。

「妻が出産を控えていました。在留資格は綱渡りで、配偶者ビザがあっても、何かの拍子に制度が変われば日本に長期間いられなくなることもあり得る。そのとき子どもはどうなるのかという恐怖感も抱いた。映画として描かなきゃいけないことがあると思った」

映画の主人公は、現在日本の技能実習生の半数以上を占めるベトナム人だ。オーディションで選んだ3人は俳優やモデル、キャスターとして活動してきた女性で、実姉が台湾で出稼ぎをしていた人もいる。3人は同胞の実習生たちと同じように、ベトナムの日本語学校で学んでから撮影に臨んだ。

「まるでドキュメンタリー」と評される背景には、徹底したリアリズムがある。雪の中をさまようフォンを長回しで撮った場面は、見ている人も一緒に歩いているような気持ちになる。

日本に来たミャンマー人家族の実話を元にした前作「僕の帰る場所」(2018年)と同様、作品が問いかけるのは、外国から来た人の人生に無関心なこの国のありようだ。「なぜ彼らは日本にいるのか、なぜ逃げているのか、自分事として考えてもらえたらうれしい」と話す。(鈴木暁子)

朝日新聞デジタル

 職場を逃げ出した3人のベトナム人技能実習生の「その後」をたどる、映画「海辺の彼女たち」が東京のポレポレ東中野などで5月…