災害時、外国人の避難どうする 技能実習生ら年々増加の鹿児島県 情報伝達、関係づくり課題【熊本地震5年】【南日本新聞2021年4月15日】

ベトナム語版防災マップを手に「他の自治会にも広めたい」と話す萩原洋一さん=大崎町(写真は一部加工してあります)

ベトナム語版防災マップを手に「他の自治会にも広めたい」と話す萩原洋一さん=大崎町(写真は一部加工してあります)
14日で発生から5年を迎えた熊本地震では、熊本市だけでも約4500人の在留外国人が被災し、言葉や文化の壁から避難生活で困窮したことが課題になった。鹿児島県内は、技能実習生ら在留外国人が年々増え、推計1万4357人(3月1日現在)が暮らす。災害時に外国人が迷わず行動できるには、情報が確実に伝わる態勢と日頃からの信頼関係づくりが欠かせない。

2019年12月に来日した鹿児島市のベトナム人技能実習生チュー・ティ・タムさん(21)は災害時に、どこに避難すればいいか知らない。母国で地震の被害に遭った経験はなく、「どうすればいいか分からない」と戸惑う。

南日本新聞の調べでは、県内43市町村のうち、26市町村はホームページ(HP)で災害などの緊急情報を多言語化している。鹿児島市は4カ国語の自動翻訳機能をHPに取り入れ、ベトナム語で緊急情報を閲覧できる。しかしタムさんは市のHPを見たことがない。

「情報を流しても、外国人が的確に行動できるとは限らない。信頼できる人からの働きかけがないと動かない」。熊本市を拠点に活動する市民団体「コムスタカ-外国人と共に生きる会」の中島眞一郎代表(66)は、熊本地震などで外国人を支援した経験から、情報が伝わるには、普段から外国人との関係構築が重要と指摘する。

■危機感

大崎町には食肉加工に従事する技能実習生ら300人以上の外国人が住む。約7割をベトナム人が占める。

町西自治公民館長の萩原洋一さん(66)は19年にベトナム語版の防災マップを作った。最初の避難行動や地震時の最終避難場所までの経路などを記し、技能実習生に配った。18年度には住民、町、企業でつくる「多文化共生環境安全連絡会議」を立ち上げ、技能実習生と地域の関係づくりに力を入れる。

「人口減少が進む地域を外国人が支える流れはこれから一層強まる。安心して暮らせる受け入れ態勢を整えないと、持続可能なまちにはならない」。萩原さんの危機感は強い。

■可視化

国は災害時に、外国人の相談に応じたり、情報を発信したりする支援拠点「災害多言語支援センター」の設置を推奨している。

熊本地震で開設できたのは2度目の震度7が襲った「本震」発生の4日後。熊本市国際交流振興事業団が運営を担った。地震後は外国人が災害の知識を学ぶ場や地域との接点づくり、情報発信に努めてきた。勝谷知美事務局次長(52)は「平時の取り組みが非常時に生きる」と強調する。

鹿児島県は地域防災計画で同様の支援拠点開設を記載しているものの、どこが運営に当たるか決めていない。県国際交流協会と近く協議するという。

多文化共生を研究する酒井佑輔鹿児島大学准教授(37)は「外国人を含む地域住民が支え合える環境づくりが大事。地域に暮らす外国人の状況を可視化し、彼らとつながる日本人や外国人コミュニティーの中心人物を把握しておく必要がある」と提言する。