<35>「留学生の新聞配達」を大手紙がタブー視している理由【日刊ゲンダイ2021年1月30日】

不都合な真実(提供写真)
不都合な真実(提供写真)

 昨年6月末時点で、ベトナム出身の留学生は6万5818人に上る。その中には、出稼ぎ目的で多額の借金を背負い、捏造書類を用いてビザを取得し来日した“偽装留学生”が数多く含まれる。そんな留学生たちが今、アルバイトを失い苦しんでいる。

新聞やテレビも「困窮留学生」について報じる。ただし、そこでは「コロナの影響で母国からの仕送りも途絶えた」といった留学生の言葉が一緒に紹介される。しかし現実にはベトナムなど新興国出身の留学生には、仕送りのある者は珍しい。逆に母国の家族に仕送りしようと来日しているのである。

 だが、取材を受けても留学生は真実を語れない。仕送りがないと認めれば、捏造書類を使って留学ビザを取得したことがバレてしまうからだ。

大手メディアの記者も、そんな事情を承知していながら、留学生の言葉をそのまま引用する。そして彼らの複雑な事情までは報じない。それは、なぜか。

近年、大手紙の配達現場は留学生の労働力頼みが著しい。真夜中から早朝にかけての肉体労働が嫌がられ、日本人配達員が集まらないからだ。そのため留学生バイトに頼るしかないという状況である。

■違法就労と残業代の未払いが横行

留学生の配達自体に問題はない。ただし、現場では留学生に許される「週28時間」を超える違法就労と残業代の未払いが横行している。残業代を払えば違法就労を認めたことになるため、雇う販売所側が支払わないのだ。

そんな配達現場における留学生の違法就労は、大手紙のタブーとなっている。だから紙面で留学生問題の本質に踏み込めない。自らに火の粉が及ぶことを恐れている格好だ。

この問題を筆者は7年も前から繰り返し取材し、週刊誌などでたびたび記事にしてきた。しかし、状況は現在まで変わっていない。

ある大手新聞社は私の取材に対し、販売所という「取引先の問題」だと回答した。確かに、新聞社と販売所に資本関係はなく、「取引先」ではある。だからといって放置してよいはずがない。少し前、フードデリバリーの業者が現場で起きている問題に関して、「配達員が何をしようと、うちの社員ではない」と反論して批判された。新聞社の回答は、彼らの逃げ口上と同じである。

現在、新聞販売所の団体は、配達員の人手不足解消のため、実習生の導入を目指してロビー活動を展開している。同じ外国人でも実習生は時間制限なしに働ける。だが、実習制度には「日本の進んだ技能を母国へ持ち帰る」という趣旨がある。新聞配達は明らかに馴染まない。そして大手紙も紙面では同制度を揃って批判している。

しかし、販売所を責めるのは酷だろう。「押し紙問題」で新聞社からいじめ倒されてきた末、最近では折り込み広告が激減し、人手不足にとどまらず、軒並み経営難にも直面しているからだ。

なぜ在日ベトナム人の真実が世に知られないのか。その元凶のひとつが、大手紙の欺瞞にあるのだ。 (おわり)

日刊ゲンダイDIGITAL

 昨年6月末時点で、ベトナム出身の留学生は6万5818人に上る。その中には、出稼ぎ目的で多額の借金を背負い、捏造書...…