(取材考記)人手不足補う「外国人材」、不安定な立場 技能実習生と国民との格差、正そう 玉置太郎【朝日新聞2021年1月27日】

年末年始の連載企画「共生のSDGs」で、外国人技能実習生を取材した。見えてきたのは、「途上国への技術移転」という建前をかかげる技能実習制度の矛盾だ。実際は人手不足の産業に労働者を送る国策なのに、その建前にもとづいて自由な転職が認められず、実習生は弱い立場におかれる。

実習制度ができて28年。この間、政府は正面から外国人労働者を受け入れず、実習生のほか、留学生のアルバイトや就労を自由化した日系人の派遣労働者で人手不足を補ってきた。日本社会に必要な働き手として正面から受け入れない姿勢が、権利の制限や労働条件の不安定さを生んだ。

政府はようやく2年前、人手不足の産業に海外から労働者を受け入れる新たな在留資格「特定技能」を設けた。その法改正をめぐる国会論議で、安倍晋三前首相がくり返したのは「移民政策ではない」という言葉だった。保守派の支持層に配慮し、定住につながるイメージをもつ「移民」の語を避けた背景がある。かわりに使った言葉は「外国人材」だった。

「移民政策とは何か」の編著がある大阪大大学院の高谷幸(たかやさち)准教授は、「移民」が「国境を越える移動に焦点をあてた呼び方」であるのに対し、「外国人」は「国民との対比を強調する呼び方」だと言う。「『移民』という言葉を避けて『外国人』と呼ぶことは、この社会の外部の人々だという印象を与え、法や権利の上での国民との格差を正当化することにつながりかねない」

新型コロナウイルスの感染が広がる中、真っ先に職を失ったのは技能実習生や日系人の派遣労働者だった。言葉や文化の壁がある上、労働条件や権利が不十分な状況におかれているためだ。そうした格差を是正せず、「外国人だからしょうがない」と「正当化」する考えが、私たちにないだろうか。

連載取材では、ベトナムから来日し、コロナ禍で職を失い、各地を転々としたシングルマザーの技能実習生の歩みをたどった。実習生一人ひとりに来日にいたる人生があり、家族や夢がある。同じ社会で暮らす「人」として向き合うことが、政策への議論を起こす第一歩になるはずだ。

(大阪社会部)

朝日新聞デジタル

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