【相次ぐ摘発 在日ベトナム人の真実】#29

ベトナムなど11カ国・地域から政府が例外的に認めていた外国人の入国に関し、菅義偉首相は今月13日、「一時停止」を発表した。その前後、ベトナムでは出稼ぎ労働者たちの日本への“出国ラッシュ”が起きていた。

首都ハノイで実習生の大手送り出し業者幹部を務めるグエンさん(仮名・30代)が言う。

「年明けから業者の間では、『日本がベトナム人の入国を3月末まで止める』という噂が流れていた。そのため業者が、日本での派遣先が決まっている実習生たちを急いで送り出し始めたんです」

法務省出入国在留管理庁によれば、「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置等」のもと来日したベトナム人は、1月4日から10日までの1週間で6794人に上った。この数は、同措置で入国した全外国人の6割近い。

■実習生が駆け込み入国

そのうち5682人は実習生だ。昨年11〜12月中旬にかけては週に1000〜2000人前後だったので駆け込みぶりが際立つ。

送り出し業者としては、実習生を日本へ派遣できなければ商売にならない。グエンさんが続ける。

「業者が実習生から受け取る手数料の半分は出国直前に支払われるんです。手数料が(日本円で)1人80万円とすると、送り出しができない場合、40万円がパーになってしまう」

それを恐れて“出国ラッシュ”が起きたのだ。ただし、日本では新型コロナウイルス感染が広がっている。実習生たちに不安はないのだろうか。

「もちろん、心配しています。事実、日本への出稼ぎ希望者は大きく減っている。でも、日本へ行くことが決まっている実習生たちは辞退したりしない。彼らは手数料の支払いで、大きな借金を背負っている。だから、コロナが怖くても行くしかないんです」(グエンさん)

コロナの影響で解雇された実習生は、昨年10月時点で4000人を超えていた。新たに来日する実習生に仕事はあるのか。グエンさんはこう話す。

「職種によっては解雇もありますが、建設業や農業などでは依然、実習生需要は強い。取引先の日本の監理団体からも『来られなくなる前に、急いで送れ』という連絡が相次いでいる」

人材を企業や農家などに斡旋する監理団体にとっても、実習生たちは“メシの種”なのだ。

一方、外国人の入国は、菅氏が「一時停止」を発表した13日以降も完全に止まったわけではない。すでにビザを取得している実習生や留学生らの来日は、21日まで認められ続ける。「送り出し業者は航空券の入手に奔走していた」(グエンさん)というので、かなりの数のベトナム人が最後の1週間で駆け込み入国したはずだ。

そして「一時停止」措置は、日本の緊急事態宣言が解除されれば終わる。よほど菅氏は、ベトナム人の出稼ぎ労働者を受け入れたいとみえる。 =つづく

(出井康博/ジャーナリスト)

日刊ゲンダイDIGITAL

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