不法滞在出頭したベトナム人2人、帰国も就労もできず【読売新聞2021年1月13日】

不法滞在のベトナム人の男2人が、出入国在留管理局に出頭したのに新型コロナウイルスの影響で帰国できず、その後、生活費を稼ぐために窃盗事件を起こして大阪府警に逮捕されていたことが、捜査関係者への取材でわかった。出頭した場合には、身柄を拘束されずに出国できる制度があるが、帰国便が確保できなかったという。一方で、就労は禁止されており、専門家は「帰国までの生活支援が必要だ」と指摘する。(水木智、古賀愛子)

転売、生活費に

 逮捕されたのは元技能実習生のドー・ズイ・ヴィン被告(24)(窃盗罪などで公判中)と元留学生の男(26)(同罪などで有罪判決)。

 起訴状などによると、元留学生は昨年7月13日、ヴィン被告は同8月2日、いずれも大阪市西区のマンション駐輪場に止めてあった電動自転車(約6万円相当)を盗んだとして窃盗容疑で逮捕、起訴された。自転車は転売しており、調べに「新型コロナの影響で生活に困ってやった」と認めているという。

 ヴィン被告は2017年11月に技能実習生として来日した。埼玉県内の建設会社で働いていたが、上司と折り合いが悪くなり失踪。その後、大阪に引っ越して配達員などをしていた。元留学生は大阪市内の語学学校に通うため16年4月に来日したが、1年8か月後に退学していた。

 2人は他のベトナム人3人とともに、大阪市浪速区の1Kマンションで同居。いずれも来日時に100万円以上の借金をしており、18年に在留期限が切れた後もアルバイトで生活費を稼いでいたという。しかし、コロナ禍で仕事がなくなり、昨年7月上旬、大阪出入国在留管理局に出頭し、不法滞在を申告。帰国を望んだものの、コロナの渡航制限で出国できなかったという。

 2人が利用したのは、不法滞在をしている外国人に対する「出国命令制度」。出入国在留管理庁によると、不法滞在を自己申告し、特定の犯罪で有罪判決を受けていないなどの条件を満たせば、入国管理施設に収容されずに帰国でき、19年は約8700人が利用したという。コロナ対策で出国までの期限が「15日以内」から「45日以内」に延長されたが、渡航制限などでベトナム便はほとんど運航していないのが実態だ。

 同庁は入国管理施設の密集を回避するため、不法滞在などで摘発した外国人について身元保証人を付けることを条件に「仮放免」を実施。昨年4月の1か月間で全国の収容者約1100人の約半数を仮放免しているが、出国命令や仮放免で国内に滞在する場合、就労は禁止され、行政の支援策もないという。

帰れぬ実態

 出入国在留管理庁によると、ベトナム国籍の不法残留者は1万5511人(20年7月時点)。昨年に北関東で相次いだ家畜や果実の盗難事件に絡み、関与が疑われたベトナム人グループが入管難民法違反容疑などで摘発された。大半はコロナの影響で仕事を失った技能実習生らだったという。

読売新聞オンライン

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