《集住地の陰で 北関東とベトナム人》(5)願い 壁越え協力の道を 同胞を助け続ける尼僧【上毛新聞2020年11月29日】

祈りを捧げるチーさん。「ベトナム人全員が悪い人じゃないけど、迷惑をかけた日本人には謝りたい」と話す=今月中旬、埼玉県本庄市

「チャーター便で帰国する27人を、さっき見送ってきた」。在日ベトナム仏教信者会長で、埼玉県本庄市にある大恩寺の尼僧、ティック・タム・チーさん(42)は12日朝、成田空港から寺に戻り、ほっと息をついた。

寺ではベトナムから来て経済的に困窮している人や日本になじめない人の相談に乗る。食料や身を寄せる場所を提供し、帰国の面倒も見ている。

チーさんはベトナムの農家で、9人きょうだいの末っ子として生まれた。父は出稼ぎ、母は市場で野菜を売って生計を立てた。ベトナムは敬虔けいけんな仏教徒が少なくない。釈迦しゃかの生誕を祝う花祭りで袈裟けさを着た僧侶の姿に憧れ、家族の反対を押し切って7歳で出家した。

北関東での家畜窃盗事件などに関与したとされるベトナム人の摘発が相次ぐ現状を憂える。「仏教の戒律を破ることと同じ。法に反したら罰を受けるべきだ。恥ずかしい」。不法滞在者はベトナム人コミュニティーでも避けられるという。「行き場がなくなり、絶望感を抱いて悪いことをしてしまう」と理由を話す。

日本は今後、技能実習生などとしてさらにベトナム人を受け入れる可能性が高い。「一番の課題は言葉の壁。実習生として来るなら、しっかり日本の文化や習慣も学んでほしい」と要望する。

半面、制度の問題点も指摘する。「技能習得が前提だけど、実態は普通の労働者。できるだけ日本人と同じように扱ってほしい」

数々の課題はあるが、ベトナム人が群馬県をはじめ北関東で根付きつつあるのは事実だ。チーさんは願う。「日本人もベトナム人も、そもそもは優しい。協力すれば良い社会になるはず。両国の距離は遠くない」(おわり)

※五十嵐啓介、黒沢豊、時田菜月が担当しました。

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