「月給10万円、ボルト投げつけられ…」ベトナム人元技能実習生の告白【毎日新聞2020年11月28日】

「悪い人ばかりだった」

 違法に豚を解体したとして、ベトナム人男性が逮捕・起訴された事件を巡り、コロナ禍で苦境に陥る外国人技能実習生に注目が集まっている。埼玉県本庄市のベトナム寺院・大恩寺に身を寄せていたベトナム国籍の元技能実習生の男性(28)が帰国直前に取材に応じ、実習先での苦しい経験を振り返った。【中川友希】

日本人と平等に扱って

 「実習先は悪い人ばかりだった」。11月上旬、新型コロナウイルス感染拡大の影響で減便された母国への飛行機の搭乗の順番待ちをしていた男性は、目に涙をためながら日本で体験したことを語った。

 男性は約80万円を借金して工面し、2016年10月に来日。熊本県北部にある農業用ビニールハウスの建設会社で働いた。会社から与えられた住居はコンテナの1部屋で、3人が暮らした。シャワーは屋外に設置されたビニール張りのテント内。冬は風が吹き込み、凍えるような寒さだった。

 月の休みは4日ほど。月給は9万~10万円で、このうち2万円を住居費として会社に支払うと手元には7万円しか残らない。日本人の同僚が話す熊本弁が分からず聞き返すと、ボルトを投げつけられた。社長に環境改善を訴えても、取り合ってもらえなかった。

 「来週ベトナムに帰りなさい」。入国から1年がたとうとした17年9月、社長から突然切り出された。借金がまだ残っており、日本で働き続けるには逃げ出すしかないと思った。栃木県に住むベトナム人の友人を頼り、実習先から失踪した。

 栃木県ではSNS(ネット交流サービス)のベトナム人コミュニティー向けに投稿される臨時の仕事を見つけ、募集主に紹介料を払って働いた。紹介料は友人に借金して工面し、もらった給料で返す。自転車操業だった。

 溶接の仕事を見つけて熊谷市で暮らしていた今年7月、路上で警察官に職務質問を受けた。不法残留が発覚し、入管法違反容疑で逮捕された。その後、一定の条件で入管での収容を解く「仮放免」が認められた。

 大恩寺に身を寄せて帰国便を待っていた男性は言う。「初めは苦労しました。でも、栃木や埼玉、お寺に来て優しい日本人に会いました。今は日本に来てよかった」。男性は取材後の11月14日に帰国した。

 出入国在留管理庁によると、元技能実習生の不法残留者(仮放免を含む)は7月現在で1万2457人。ベトナム人はうち8770人と約7割を占める。技能実習生は元々、ベトナム国内でも貧しい農村部の出身者が多い。入国のために70万~100万円ほどの借金を背負って来日。低賃金で、収入は借金返済や仕送りに消えるため、ほとんど手持ちがないという。

大恩寺の尼僧で在日ベトナム仏教信者会会長のティック・タム・チーさん=東京都品川区で2020年11月9日午後0時34分、中川友希撮影

 そんな実習生らをコロナが直撃した。「飛行機がなくて帰れない」「公園で寝た」――。大恩寺の尼僧で、在日ベトナム仏教信者会会長のティック・タム・チーさん(42)の元には助けを求めるベトナム人が集まり、4月以降、300人以上の帰国を支援した。

 タム・チーさんは技能実習制度について「文字通りであれば技術を学びながら仕事をする制度なのに、何も勉強できずに労働者として扱われている」と指摘。「日本は若い人材が足りず、外国人労働者がたくさんいる時代を迎えている。技能実習生を(日本人と)平等に扱ってほしい」と話した。

毎日新聞

「悪い人ばかりだった」  違法に豚を解体したとして、ベトナム人男性が逮捕・起訴された事件を巡り、コロナ禍で苦境に陥る外国…