「特定技能」進まぬ橋渡し 創設1年半 識者「公的仕組み整備を」【西日本新聞2020年11月23日】

オンラインで取材に応じるベトナム人のチャンさん。資格試験に合格し、12月から介護職に就く予定という

オンラインで取材に応じるベトナム人のチャンさん。資格試験に合格し、12月から介護職に就く予定という

外国人の就労拡大を目的とした在留資格「特定技能」が広がらない。2019年4月の創設から1年半が過ぎたが制度の周知不足は解消されず、外国人雇用は民間任せのままだ。「コロナ不況」でも人材確保に追われる業界は少なくない。識者は「働きたい外国人と雇いたい企業をつなぐ公的な仕組みを早急に作るべきだ」と提起する。

「特定技能のことインターネットで見つけました。勉強はユーチューブ」。ベトナム人のチャンさん(23)=愛知県=はオンラインでの取材にこう話した。2017年秋に技能実習生として来日。機械保全の仕事に就き、実習期間終了を前に特定技能の資格試験に合格した。12月から介護施設で働く予定だ。

特定技能は、農業や製造業など人手不足の14分野で外国人を受け入れる新たな在留資格。技能実習生は分野が同じなら資格試験を受けなくても特定技能に移行できるが、チャンさんは「介護は長く働ける」と新たな分野に挑むことにし、試験を受けたという。

ただ、チャンさんはまだ日本語が不自由だ。特定技能は介護も機械保全も在留期間は上限5年で同じだが、取材のやりとりでは、こうしたことをどこまで理解しているのか分からなかった。

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日本商工会議所が今夏行った調査によると、回答した中小企業約3千社の半数が「外国人材の受け入れニーズがある」とした。これらの企業には「手続きがよく分からない」「雇用後の支援のノウハウがない」「募集方法、採用手段が分からない」との回答も多く、周知不足で雇用機会を逸している実態が浮かんだ。

一方で出入国在留管理庁によると、特定技能外国人も9月末時点で8769人にとどまる。制度を創設するだけで外国人が押し寄せるほど甘くはなく、コロナ禍による入国規制もあり、政府が示した2024年までに最大34万5千人という見込みにはほど遠い。

同庁は周知を図るため、13カ国語で情報発信する特設サイトを9月末に開設。来年度予算の概算要求に、海外にいる外国人と日本企業を橋渡しするサイトの開発費も盛り込んだ。

担当者は「民間に任せてスタートダッシュがうまくいかなかった。国が後押ししたい」と強調するが、ビジネスとは縁遠い入国管理行政の取り組みが奏功するかは読み切れない。

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危機感を強めた民間の関係団体は9月末、「特定技能受入定着促進プラットフォーム」を立ち上げた。

人材紹介を行う企業や生活支援を行う団体、複数国の送り出し機関など約20団体が参加。採用方法が分からない企業と就職先を見つけられない外国人をつなぎ、定着に向けて母国語で24時間相談に乗る。費用は企業側の負担という。

創設を呼び掛けた人材紹介会社「フォースバレー・コンシェルジュ」の柴崎洋平社長は「法令違反をする企業は排除し、世界一クリーンな仕組みを作りたい」と意気込む。

グローバルな人材獲得競争の観点から、国や公的機関の関与を課題に挙げる識者もいる。大東文化大の高安雄一教授(韓国経済)によると、韓国は人材確保のため、送り出し側と2国間のハローワークのような仕組みを構築。相手国から求職中の外国人の名簿を受け取り、韓国の公的機関が企業に紹介している。

日本のように仲介業者を通して雇用すると経費がかさみ、雇用される外国人の賃金が安くなりかねない。高安教授は「日韓の最低賃金の差は縮まり、日本の労働市場の魅力は低下している。韓国のように公的な仕組みを整えることが望ましいのではないか」と話す。 (久知邦)

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