困窮する外国人技能実習生 日本人が犯罪をそそのかす構図も【NEWSポストセブン2020年11月21日】

農業など人手不足の職場へ外国人技能実習生が派遣されることが多い(イメージ)

農業など人手不足の職場へ外国人技能実習生が派遣されることが多い(イメージ)

ベトナム人の技能実習生による犯罪が立て続けに報じられている。それらのニュースに接したとき、ネットでよく見かける「また外国人か」は、治安の悪化を憂えるのに的を射た表現なのだろうか? ライターの森鷹久氏が、窮した外国人を狙う日本人グループの存在についてレポートする。

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北関東で相次いだ家畜や農作物の盗難事件──。

連日テレビや新聞で報じられ、一部で噂されていた通り、容疑者として複数のベトナム人が逮捕された。そのほとんどが「技能実習生」として来日し、農家などで働きながら賃金を得て、母国の家族や親族に送金する生活を送っていた。事件を取材したテレビ局社会部記者が言う。

「実習生たちは、新型コロナウイルスの影響で仕事もなくなり、かといって国にも帰ることができず、本当に切羽詰まっていたようです。犯人の知り合いだというベトナム人に話を聞くと、悪いことだとは思うが生きるためには仕方がない、人を傷つけることは嫌で泥棒をしたのではないかと同情していました」(テレビ局社会部記者)

また、逮捕されたベトナム人の周辺を取材すると、次のような話も聞こえてくる。

「結局みんな、日本に来れば技術を学べるだけでなく大金も稼げると思って、ベトナムの送り出し機関やブローカーに数百万円を払って来ている。もちろん借金。ところが実習は、農家のお手伝い、雑用ばかり、金も月に10万ちょっとしか貰えない。これじゃ仕送りどころか、借金も返せない。騙された、と思っている人は少なくない」(群馬県内農業関係者)

「技能実習」や「研修」の在留資格で外国人が働きながら日本に滞在できる外国人技能実習制度によって、教育面よりも実質的な労働が重視される現在のような形になったのは2010年から。2009年に入国管理法が改正され、入国してすぐ技能実習、つまり労働力としてあてにできるようになったためだった。以降、日本中の働く場所、その多くは人手不足の職場で働く外国人の姿が激増した。

外国人技能実習生の送り出し機関や、あっせんするブローカーによる問題は以前から指摘されており、日本側も対応していないわけではない。法改正を重ね、今では認定されていない送り出し機関からの実習生受け入れはしていないし、いわゆるブローカーの活動そのものが違反、という建前にはなっている。ただし、正規のはずの送り出し機関においても賄賂などによって不正が行われている事例もあり、100%防ぐことはできていない。不正が起きないように2国間取り決めをするなどの取り組みも2017年から始まっているが、今も厳しい現実は存在している。

外国人技能実習生は通常、それぞれの国の送り出し機関によって選抜された実習生が派遣前教育を受けたのち、実習実施先へ渡航する。あくまで技能を習得するのが目的なので、身につけたい技術を基準に受け入れ希望を決めるのが本来なのだが、実際には賃金や労働環境などを基準に希望を決めていることが多く、また、研修先の紹介段階において、実態と違う好条件を提示されるという日本側の受け入れ先も紛れ込んでいる。身を守るために研修生たちは、先輩や同期生たちと綿密に情報交換をしている。そんな彼らにとって農業はもっとも研修生から人気が低い分野だと言われているが、やはり誰もが希望通りにはいかない。突出した能力を持つ一部の人たちを除けば、単なる労働者として投入される現場しか残っていないのである。さらに、言葉も生活習慣も異なる国で、最大の目的である稼ぐこともままならず、さらにコロナ禍に見舞われた。

一部の、運が良く能力もあるベトナム人技能実習生たちはコロナ禍でも大いに稼ぐことができたが、大多数の実習生は仕事が減り生活は逼迫していた。彼らは日本で技術を会得し、母国に錦を飾りたいと歯を食いしばってきた。だが、人気が無い農業に従事する実習生たちは、すでに日本での生活に落胆していたところへ、さらに追い討ちをかけられたような格好になってしまった。もう夢や希望などと、綺麗事を言う暇さえないような現実に押し潰されていた。

こうなると、一部が自暴自棄になって犯罪に走ることも自然な成り行きともいえそうだが、悪いことに、追い詰められたベトナム人を狙うグループが存在する。

「仕事がなくなり食うに困ったベトナム人たちに犯罪をさせて金儲けしようとしている奴らがいる。ベトナム人に携帯電話を契約させて、それを買い取り詐欺に使ったり。実際に金に困ったベトナム人が手を出して、検挙もされている」(群馬県内農業関係者)

彼らが巧妙なのは、困窮する彼らを救ってあげる人として接触するところだ。だが実際には、困難につけ込んで利用しようとしているだけ。しかし溺れそうになった時、手を差し伸べてくれる人がいれば、その手を必死で掴もうとするように、追い詰められた人間には、そんな握手でも救いの手に見えてしまう。そして、本意ではない犯罪に手を染める外国人技能実習生が続出するのだ。

東京都内では、まさにこうしてベトナム人を狙い撃ちにした男女が逮捕された。大手紙警視庁担当記者の話。

「ベトナム人の女らを風俗店で働かせたとして、日本人の男女が逮捕されました。女らは技能実習生と見られ、風俗店で働くことは在留資格で認められていません。甘言があったにせよ、仕事がなくなり、収入を得るために風俗店で働かざるを得なかったのでしょう」(大手紙記者) 今後、外国人技能実習生による犯罪がさらに目立ってきても、単純に「外国人犯罪だから」と断罪するには無理がある。このところ、犯罪グループが人材スカウトをSNS経由で行うという、あまりの軽さに驚かされることが続いているが、その範囲が外国人技能実習生にまで伸びていることが明るみに出つつあるからだ。

日本国内の反社会勢力も、一般市民と同じくコロナの影響で生活に行き詰まっている。SNSを使って人集めをする「点検強盗」の背景にいるのもそうした勢力で、素人に人殺しでもなんでもいいからさせて、金を奪い取らせようとしている。その「なりふり構わなさ」は、使える人間であれば、老人だろうが子供だろうが、そして「外国人」であっても良い、というレベルまで広がっている。今、外国人を犯罪に走らせているのは他ならない日本国内の反社勢力ではないか、と思わずにはいられない。

向上心を持って海外で働くことを選んだのに、聞いていた話とはまったく違う環境に驚かされるのは珍しいことではない。だが、外国人技能実習生については、問題が多すぎる。もちろん、労働条件などに配慮している受け入れ先もあるが、人権無視の問題が今もなくならない。人手不足を賃金が安い実習生で補うという発想しかない受け入れ側が多すぎるのだ。そのような悪条件下にある技能実習生ほど緊急事態になっても十分な補償を受けられないし、助けられる機関へ繋げてくれる人も周囲にいない。となれば、誰だって道を踏み外してしまいそうにはなる。

「特に技能実習生は、その実態についてこれまで幾度も報じられてきたのに放置されたままです。コロナ禍で八方塞がりという状況なのに、まだほったらかしにされている。もちろん、泥棒などの犯罪はよくないが、日本経済や日本人の都合で連れてこられた、という側面があるベトナム人を、一方的に断罪できる状況なのかと感じずにはいられません」(大手紙記者)

平成29年時点で、日本国内には25万人以上の技能実習生が存在しているが、そのうちどれだけの人数が、帰国したくとも帰れず、仕事が減ったか全くない、という状況に陥っているのか。彼らが犯罪に巻き込まれたり、犯罪に走ったりしたことを報じるニュースに接するたびに、「彼らは日本人じゃないから」と単純に考えてはいないか。その彼らの犯罪は、悪意ある日本人が手引きすることによって起きているものも少なくない事実から目を背けてはいけない。

NEWSポストセブン

 ベトナム人の技能実習生による犯罪が立て続けに報じられている。それらのニュースに接したとき、ネットでよく見かける「また外…