困窮、やむなく窃盗…「レ・ミゼラブル」のような実習生【朝日新聞2020年11月18日】

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技能実習生の実態をベトナムで聞き取り調査する神戸大の斉藤善久准教授=2020年2月7日、ベトナム・ゲアン省、内田光撮影

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 新型コロナウイルス禍で職を失い、苦境に追い込まれているベトナム人技能実習生たち。どんな人が来日し、日本でどんな状況にあるのか。ベトナム語が堪能で、日本のベトナム人コミュニティーにも詳しい神戸大の斉藤善久准教授(アジア労働法)に聞いた。

7年ほど前から、ベトナム人のSNSコミュニティーなどの中で相談を受け、困っているベトナム人の支援をしてきた。ベトナムでも技能実習生の送り出し機関で日本語講師として働きながら実態を調べるなど、長期間調査してきた。

多くの技能実習生は、家族を助けたり事業を始めたりするため、日本で稼ぐことを夢見てやってくる。日本語は難しい上に世界では通用せず、日本に永住もさせてもらえない。それでも来日するのは、安全なイメージがあり、きちんとした実習先で数年働けば、帰国して家を建てられる人もいるからだ。だが、中にはひどい扱いをされて苦しむ人も多い。

コロナで失職した実習生は多いが、犯罪集団に入る人が多いわけではない。だが、失職して居場所をなくし、やむを得ず怪しげなグループに身を寄せる例はあるのではないか。ベトナム人コミュニティーの高利貸に金を借り、返せないならと使われる例もある。素人で捨て駒として使われるから捕まってしまう。

警察庁によると、2019年の外国人検挙件数の国別割合は、ベトナム人が35%で最も高かった。来日する人が増えているから、ある意味当然だ。検挙されたベトナム人技能実習生について、違反法令別にみると、出入国管理法違反の不法残留が最も多い。

偽造在留カード所持などの検挙人数は、5年間で約8・7倍に増加した。在留カードを偽造するのは、失踪した後も穏便に働くためだ。違法なオーバーステイ(超過滞在)ではあるが、目立たないように静かに働いているだけだ。

中には盗品などをベトナムに送って商売する人たちもいる。コロナ禍で輸出が難しくなり、数が増えた日本国内のベトナム人向けの商売に切り替えつつある。子豚などもここ数年、ベトナム人のSNSコミュニティーで盛んに売買されていた。ベトナムでは子豚の丸焼きを食べる習慣があるからだ。

在留資格を失っても働き続けようとするのは、来日のために多額の借金を作っている事情がある。なるべく穏便に暮らしたいと工場で働いていた不法就労者たちが、コロナ禍で業績が悪化した企業から真っ先に解雇されている。あきらめて帰国しようと出入国在留管理局(入管)に出頭しても、コロナ禍で飛行機が飛ばず、すぐには帰れない。

入管から一時的に収容を解かれる「仮放免」を受けても行き場がなく、再収容してほしいと頼んで断られた人もいる。各地を転々とし、長野県の公園から「寒い、お金がないです」とメールを受けたこともある。

日本政府は安い労働力として使うため外国人を入国させておきながら、技能実習生のサポートや受け入れ企業の監督は民間に任せきりだ。実習生がひどい扱いに耐えられず失踪したら、不法滞在だと摘発する。企業もコロナ禍で困ったら真っ先に切り捨てる。働けば不法就労になるなら、盗むしかない。まるで「レ・ミゼラブル」の世界だ。

日本は少子高齢化で外国人に頼らなければ、この先立ち行かない。それなのに、あっさり外国人を使い捨てるような国でよいのか。

入管は行き場のない無一文の元実習生に仕事を禁じて放り出さないでほしい。少なくともコロナ禍が落ち着くまでは、出頭後も一定の要件のもとで、帰国までの生活維持や航空券購入のための就労を認めるべきだ。政府は困窮している実習生らを支援する仕組みを早急に検討すべきだ。(平山亜理)

朝日新聞デジタル

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