貴重な担い手の外国人支援 家族ぐるみの付き合い 賃上げへ人事評価制度 熊本県内外農家、魅力アップへ知恵絞る【熊本日日新聞2020年11月16日】

貴重な担い手の外国人支援 家族ぐるみの付き合い 賃上げへ人事評価制度 熊本県内外農家、魅力アップへ知恵絞る

「特定技能」制度で働くミャンマー人のザザウさん(手前)と、収穫作業を見守る雇い主の宮崎龍昭さん=6日、宇城市

担い手の高齢化や後継者不足に悩む農業の現場では、これを補う外国人材の役割が拡大する一方だ。昨年度から受け入れ枠を拡大する「特定技能」制度も始まったが、アジア諸国の経済発展で国境を越えた人材獲得競争も激化。熊本県内外の農家は、貴重な担い手に長く働いてもらおうと物心両面のサポートに力を入れている。

「農業経営を拡大すると雇用が必要になる。労働者が減り続ける中、農業はもはや外国人なしでは考えられない」。5日、九州農政局(熊本市)が開いたセミナーで、農業政策に詳しい経済評論家の叶芳和さん(77)=東京=が強調した。

全国の基幹的農業従事者が過去20年間で約3割減少する一方、規模拡大で人を雇う農家は増加。技能実習生をはじめとする農業分野の外国人労働者は2019年が3万5500人と、5年間で倍増した。

叶さんは、かつて労働力を日本に「輸出」してきた中国が、経済発展に伴い外国から「輸入」する立場に転じたと指摘。ほかのアジア諸国も所得水準が上がり、「競争力が低下した日本に外国人を呼び込むには、収入以外の魅力アップも必要だ」という。

こうした課題への対応は、トマトやイチゴなど施設園芸が盛んな熊本ではとりわけ重要になる。多くの手作業が必要なためで、県内の農業分野で働く外国人労働者は19年に3420人と、茨城県に次いで全国2位だ。

ミニトマトやコメなどを生産する宇城市の宮崎農園は、規模拡大で16年から外国人技能実習生を受け入れている。ミャンマーとベトナムから来た男女8人で、20代が中心だ。

社長の宮崎龍昭さん(68)は、若者が暮らしやすい環境に気を配る。全員が暮らす寮には、故郷の家族らと連絡が取りやすいようWi−Fiを整備。花見などの行事を通じ、家族ぐるみの付き合いも心掛けているという。

ミャンマー人のザザウさん(28)は技能実習から特定技能に移行し、来日5年目。「仕事も休みの日もとても楽しい」と話す。色づいたミニトマトを手際良く収穫する様子に、宮崎さんは「今どきの日本の若者より責任感が強く、助かっている。長く働いてほしい」と目を細める。

宮崎県小林市で野菜や茶を生産する四位[しい]農園は、約40人の外国人を雇用する。帰国後の就労も見据えて大型特殊免許の取得費用を負担。習熟度に応じて仕事を割り当て、賃上げにつながる人事評価制度も導入している。会長の四位廣文さん(59)は「言葉や文化の違いはあっても、モチベーションアップにつながる策を重ねれば良い人材は集まってくる」と強調する。

こうした農家側の努力がある一方、外国人技能実習生の失踪件数は年々増加し、社会問題化している。出入国在留管理庁は「背景には賃金不払いなどの不適切な対応もある」と指摘する。

さらに今年は新型コロナウイルス感染拡大で、技能実習生が予定の時期に帰国、入国できない問題が全国で発生。国が今いる実習生の在留期間を延長して対応している。コロナ禍が長期化すれば営農に支障が出るとの不安も農家に広がり、外国人材に依存する実態が改めて浮き彫りになった。(福山聡一郎)

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