外国人在留支援センターが「多文化共生」を実現する理由【DIAMOND2020年11月10日】

新型コロナウイルス感染症の拡大は、留学生をはじめとした在留外国人や、日本での就労を希望する外国人に大きな影響を与えている。そうしたなか、今年(2020年)7月、JR四ツ谷駅前(東京都新宿区)に、外国人の出入国在留・人権・就労・労働関係の相談窓口となる「外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)」がオープンした。これは、関連4省庁8機関〈出入国在留管理庁、東京出入国在留管理局、東京法務局人権擁護部、日本司法支援センター(法テラス)、東京労働局外国人特別相談・支援室、東京外国人雇用サービスセンター、外務省ビザ・インフォメーションおよび日本貿易振興機構(ジェトロ)〉が、ひとつ屋根の下(同建物内の同フロア)に集まったもので、多文化共生社会の実現を促進するものである。開所から約4カ月――同施設センター長の田平(たびら)浩二さん(出入国在留管理庁在留支援課長/外国人在留支援センター長)に話をうかがった。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

来訪者にとって、シームレスな連携がうれしい施設

今年2020年7月に東京・四谷に開所した外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)は、在留外国人の出入国在留・人権・就労・労働関係の相談や手続きを、当事者である外国人やその支援者、雇用側の企業・団体から受ける行政施設だ。4省庁8機関がひとつのフロアに集まっている状況を、田平センター長はこう解説する。

「たとえば、在留資格の関係で相談に来られた外国人は、まず、東京出入国在留管理局(東京入管)の窓口で相談をするのですが、『仕事を探したい』という話になったときには、同じフロアの東京外国人雇用サービスセンター(ハローワーク)に案内できます。

また、相談の中で、『休業手当が支払われていません』という話になったときには、東京労働局外国人特別相談・支援室の担当者に、『いま、こういう話を受けていますが、ご同席いただけませんか?』と呼びかけて、来訪者が窓口を移動しなくても話を聞くことが可能です。

事前予約の際にあらかじめ内容がいくつかの機関に関するものであることがわかっている場合には、異なる機関の担当者が、最初から席を並べて外国人に向き合うこともあります。法律的な相談になる場合など、法テラスにも随分同席いただいています」

フロアには視界を遮る仕切りはほとんどなく、来訪者の相談に応じる担当者が別機関の担当者の在席状況を程よく知ることができる。スムーズな窓口対応はセンターの来訪者(主に在留外国人)にとってありがたいことだ。霞が関・品川・新宿・九段…都内に散らばっていた8つの機関が同じ建物のひとつのフロアに集結したことには大きなメリットがあるようだが、開所から約4カ月あまりの現在、利用者の実態はどうか。

「相談件数は1日に100件ほどで、一人の方が複数機関を訪れることもあります。中国・韓国・フィリピン・ベトナム…など、さまざまな国の人がやって来ます。親族、知人、支援者など日本人も多いです。

8月は、開所した7月に比べて少し落ち着いた(来訪者が減った)感じでしたが、9月はまた増えてきました。開所後まだ間もなく、前年との比較もできませんので来訪者数の推移に、新型コロナの影響がどの程度あるかというのはわかりません」

窓口での共同対応にも表れるように、軒を同じくした4省庁8機関は、情報共有をベースにした連携を強めているという。

「まだ始まったばかりですが、運営方法を協議するため、各機関の管理職クラスが週に1度集まり、行事のお知らせ、施設見学の予定、それぞれの業務内容などを共有しています。ワンフロアで約140名が働いていますが、それぞれの機関が他の機関のさまざまな情報をあらかじめ知っておくことはとても重要です。

そのほかにも、ある機関が開催する研修会や勉強会に声をかけあってそれぞれの業務内容などについての知識を深めたり、ある機関が主催するセミナーに他機関からの説明の機会を設けたりしていただいています。FRESC内部の連携を深めつつ、外部の方々に対して関連情報を効率的に提供することができますので、こうした取り組みはさらに進めていきたいと考えています」

外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)
東京都新宿区四谷一丁目6番1号 四谷タワー13F
ナビダイヤル:0570-011000
(一部のIP電話及び海外からは03-5363-3013)

外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)フロアガイド

出入国在留管理庁(開示請求窓口)
東京出入国在留管理局(在留相談)
東京法務局人権擁護部(人権相談)
日本司法支援センター(法テラス)(「法的トラブルに関する」情報提供・法律相談)
外務省 ビザ・インフォメーション(査証相談)
東京労働局外国人特別相談・支援室(労働問題相談)
東京外国人雇用サービスセンター(就職相談)
日本貿易振興機構(ジェトロ)(高度外国人材活用相談)

無料電話相談「FRESCヘルプデスク」を開設

開所2カ月後の9月、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で困りごとを抱える在留外国人のために、FRESCは「FRESCヘルプデスク」を開設した。平日の9時から17時までの無料電話相談で、14言語に対応しているものだ。

「いま(編集部注:10月中旬時点)は、1日30件ほどの電話があります。相談内容としては、新型コロナの影響により、帰国できない場合の在留資格の手続きや働けなくなったことによる休業手当の話など、さまざまです。スタートしてまもなく、特定の国の方の相談件数が一時的に増えたことがありました。その国の方々の何らかのコミュニティーの中で、例えばSNSなどで、『FRESCヘルプデスク』の存在と『この番号の電話でいろいろな相談ができるよ』といった情報が広まったのではないか、と推測しています。私たちにとってはうれしい展開です。相談窓口の存在をできるだけ多くの人に知っていただき、困りごとを解消してもらいたいと考えています」

現在、日本には290万人強の外国人がそれぞれの在留資格を持って暮らしている。新型コロナウイルス感染症の拡大が、そうした在留外国人の就労者や留学生に困難な状況をもたらしているようだが…。

「当センターの来訪者やヘルプデスクへの電話相談では、休業手当や在留手続きの相談が多いです。それがそのまま新型コロナ感染症の拡大によるものとは断言できませんが、『母国に帰国できないので、不法滞在にならないように在留資格を変更するにはどうすればいい?』『再入国するときにはどうすればいい?』『休業手当が支払われていない』などといった相談は、今回の新型コロナの影響が少なからずあるのではないかと考えられます」

“コロナ禍における雇用”は企業にとっても大きな問題だ。「外国人在留支援センター」という名称から、FRESCは在留外国人のためだけの施設と思われがちだが、その根底には “多文化共生社会の実現”があり、外国人を雇用している、あるいは、これから雇用していく企業の相談も受け付けている。

「人手不足解消や海外展開のために外国人材を雇いたいという企業の方もいれば、すでに雇っていらっしゃる方で、『こうしたケースはトラブルを生むのか?』『転職希望の外国人に会ったが、○○の在留資格で雇っても大丈夫か?』『外国人材の育成・定着はどのように行えばよいのか?』など、いろいろな相談があり、ジェトロのほか、ハローワーク、東京労働局外国人特別相談・支援室、東京入管、法テラスも案件によって対応しています。ジェトロやハローワークは企業に出向いて説明したりしています。

そもそも、在留資格『特定技能』が設けられる(編集部注: 2019年4月1日~改正入管法施行)など、日本の社会は、専門的技術を持つ外国人材を必要としていますので、企業側のニーズに沿うかたちで、FRESCがお役に立てる機会も増えていくと思います」

FRESCの広々としたフロア

広々としたフロアは、対応ブースで多くの来訪者を迎え入れられる 写真提供:FRESC

行政側の懇切丁寧な対応が多文化共生のカギ

FRESCに入居している出入国在留管理庁は、現在、外国人向けの一元的相談窓口の設置・運営を促進し、全都道府県・市区町村の地方公共団体を対象に、交付金の交付を行っている。

「地方自治体が、外国人からの相談をワンストップで引き受ける窓口をつくった場合は、設置の段階で、『整備費』として必要経費の10分の10を、運用の段階では、『運営費』として必要経費の2分の1を国が出すことになっています。令和2年度(2020年度)の実績としては、9月現在で、189の自治体に交付が決定しています。

FRESCのヘルプデスクにも、『生活のためのお金に困っています』とか『病院にかかりたいけど、通訳がいないので困る』といった、毎日の生活に密着した相談事があります。そうした生活相談の多くは、私たちFRESCの入居機関では対応できないものです。そうした相談への対応は自治体で対応していることが多いので、自治体につなぐことになります。

その際、まずどこに相談に行けばよいのかわからないということがないようにするために、自治体にも、ワンストップの相談窓口が設置されることが望ましいと考えます。市役所の○○課に相談に行った外国人が『それはうちじゃない』とたらい回しにされるのを避けるためにも、まずは一元化した窓口で話を聞き、ある程度まで答えたうえで、担当者につないでいくことが望まれます。そうした対応ができている自治体も多いですが、『今後増えていく外国人に備えていきたい』という、これからの自治体もあります。そうした自治体が参考にできるような実例の共有もFRESCで行っていきたいと考えています」

たとえば、日本人が海外旅行で何かのトラブルに遭ったとき、渡航国の行政機関に冷たくあしらわれたら絶望的な気分になるだろう。その国で生活している場合はなおさらで、受け入れ側の懇切丁寧な対応が多文化共生のカギになっていく。

「外国人が清水の舞台から飛び降りるほどの思いで窓口に行き、『ここではない』と突き放されたら、日本という国自体を嫌いになるかもしれません。私たちがいちばん避けるべきは、日本で暮らす外国人を嫌な思いで帰国させてしまうことです。日本に対して良い思いがない(嫌な思いを持っている)外国人は、帰国しても、二度と日本に行きたいとは思わなくなるでしょうし、母国の友人が訪日すると知ったときにあまり良い話はしないでしょう。行政機関は相談案件の『たらい回し』をせずに、できるだけ親身に外国人の話を聞くことが重要です。

もちろん、案件によってはすぐに解決できるものとできないものがありますが、いずれにしても、きちんとした対応が必要です。ワンストップはそのための有効な手段であり、一元化した窓口での連携した対応や関係する機関(担当部署)にしっかりとつないで相談対応を途切れないようにすることが、悩みを抱えた外国人の問題解決を進めていくと考えます」

『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン』

外国人が日本で暮らすにあたっての大きな課題として、「言語コミュニケーション」の問題が挙げられる。世界の言語の中でも日本語の習得は特に難しく、行政は多言語による外国人対応を心がけているが…。

在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン

在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン

「国においては、これまでも多言語化への取り組みを進めているところです。それに加えて、いま、出入国在留管理庁(以下、「当庁」)では、『やさしい日本語』の普及に努めており、FRESCもその一翼を担っています。外国人と会ったら、『とりあえず、英語を使ったほうがいいだろう』と、私も考えてしまいますが、日本に住んでいる外国人の多くは日常会話程度の日本語を話せますので、英語よりも、わかりやすい日本語で話してもらったほうがありがたいという調査結果があります。

そこで、行政機関でよく使われがちな難しい日本語をどのように書き換えれば(言い換えれば)わかりやすくなるのかを専門家の方々にもご指摘いただき、本年8月に当庁と文化庁において『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン』を取りまとめ、法務省ホームページの『外国人生活支援ポータルサイト』などで公開しています。

同ポータルサイトでは多言語とやさしい日本語の2つの方法で発信していますが、さまざまな国の方々がいる状況において、やさしい日本語の使用と普及に努めたいと考えています」

受け入れ環境の整備をはじめ、在留外国人の就労・生活支援で多文化共生社会の実現を目指しているFRESCだが、さしあたっての課題や目指すべきゴールはあるのだろうか?

「FRESCには、在留資格や就労・労働などについては一定の権限を持つ機関がありますが、相談内容によっては、FRESC内の機関では対応ができず、外国人が居住する自治体との連携が必要になります。特に、FRESCヘルプデスクには地方で暮らす外国人からの電話もあるので、該当の自治体へのつなぎ方に気を配っています。

国でも自治体でも、大切なのは関係者間の情報共有だと考えます。FRESCは関係省庁の担当者たちがワンフロアにいるために物理的にも連携しやすいので、いろいろな実例が出てきます。FRESCでのこの取り組みが、他の機関間での連携の取り組みの参考になるようにできるといいと考えています」

一人ひとりの違いを知ったうえでの相互理解

労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)の減少に伴い、多様な働き手とともにダイバーシティ社会が形成される日本において、在留外国人はこれからますます増えていくだろう。ウィズコロナからアフターコロナの2020年代――多文化共生の実現に向けて、日本人は外国人にどう向き合っていくべきか。

「まず、外国人には日本のことをよく知ってもらい、外国人を雇用する企業の方々をはじめとして、日本人には外国人のことを知ってもらうことが大事だと思います。その上で、外国人と日本人の区別をできるだけ減らしていくことが必要ではないでしょうか。

多くの日本人は、日本で暮らし働く外国人がどういうことを望んでいるか、何に困っているか…それを十分に把握できていないのではないかと思いますが、まずはそこを把握することが大切です。

一方で、外国人のゴミの出し方や夜に友達と騒ぐといった行為に対する、日本人からの苦情が多いと言われています。外国人には、そうした苦情があることを理解し、どうしたらトラブルにならないかを考えて行動していただく必要があると考えています。外国人自身ではわからないこともあると思いますので、地域社会などで粘り強く伝えていくことが大事だと思います。

企業においても、外国人材の定着のためには、働く上でのルールや心構えを粘り強く伝えて理解を深めてもらうことも大事だと考えます。そうしたことを通じた相互理解の上に、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会が実現できるのではないかと思います。究極的には外国人を特別扱いせずに、日本人と同じ評価軸で向き合うことができるようになることが大事ではないかと思います。『この会社は自分のことをわかってくれない』という考えでは、外国人材は職場に定着しませんし、しっかり働こうという気持ちにならないでしょう。

私たちFRESCとしては、まずは外国人が、仕事、ひいては日本という国を嫌いにならないようにするために、その人自身がどういう状況なのかをしっかり把握しながら、可能な限り、一人ひとりの状況を踏まえた相談対応ができるように努めてまいりたいと思います。そうした考え方や対応が、行政分野のみならず日本人全体に広がり、一人ひとりの違いを見据えながら、配慮しなければいけないところには配慮しつつも、それが過剰な配慮にはならないようにして、外国人と共に暮らしていくことが肝心だと考えます」

ダイヤモンド・オンライン

新型コロナウイルス感染症の拡大は、留学生をはじめとした在留外国人や、日本での就労を希望する外国人に大きな影響を与えている…