【入国制限の緩和】各国の感染状況見極めよ【高知新聞2020年9月30日】

新型コロナウイルス感染症は世界では依然として拡大局面にある。拙速な「開国」だったという結果を招かないか。不安が拭えない。

政府は10月1日から、感染拡大防止の水際対策として実施している入国制限を緩和する。観光客を除き、ビジネスなど3カ月以上の中長期間滞在する外国人を対象に全世界からの入国を条件付きで認める。
政府はこれまで159カ国・地域からの入国を原則拒否してきた。

一方、ビジネス関係者の出入国緩和を優先し、ベトナム、タイなど16カ国・地域と個別に協議。一部で往来が再開している。国費留学生の受け入れも8月から始めている。
 今回は私費留学生や技能実習生、医療、文化芸術、スポーツなどを目的とする入国も認める。
経済活動再開を重視する菅義偉首相の姿勢が反映されたようだ。来夏の東京五輪・パラリンピック開催に向けて、海外の選手らを受け入れる地ならしの意味もあるという。

首相は官房長官時代にも、観光支援事業「Go To トラベル」の前倒し実施を主導した。今回も「経済再生のためには国際的な人の往来再開が不可欠だ」と述べている。
感染拡大の防止策と経済再生策のバランスが難しいのは理解できる。経済界や他国の要請に押し切られた面もあるが、経済ありきの見切り発車であれば、国内状況が悪化する懸念が募る。
政府は、出国前の検査証明や入国後2週間の自宅待機などを、受け入れる企業や団体が確約することが条件としている。
成田や関西空港などでも検査態勢の拡充を進めるという。検査機械や人員の充実、結果が出るまでの待機場所の確保など課題も多い。
PCR検査の精度にも限界がある。政府には、国民の不安を解消する水際対策の徹底と合理的な説明が求められる。
首相周辺には、国内の感染状況が「下火となっている」という認識があるようだが、世界の状況は異なる。感染者は3300万人、死者数も29日に100万人を超えた。流行が衰える気配はない。

入国を解禁した結果、感染者が再び急増した例もある。
欧州ではバカンスや経済活動の再開で人の移動が活発になり、再拡大が顕著になった。ハンガリーでは今月、国境再封鎖に踏み切った後も感染者が増え続けている。

アジアでも、マレーシアは米国やブラジルを対象に、緩和していた入国規制を再強化している。
国内では秋以降、インフルエンザとの同時流行が危惧され、医療機関の逼迫(ひっぱく)も懸念される。専門家には入国制限緩和は海外の流行状況を踏まえ、慎重に対応すべきだとの否定的な意見もある。
制限を緩和した後も、各国個別の感染状況を慎重に見極めて対応する姿勢を政府に求める。状況が深刻な国からの入国を再び制限する基準も明確にしておく必要があろう。

 新型コロナウイルス感染症は世界では依然として拡大局面にある。拙速な「開国」だったという結果を招かないか。不安が拭えない…