コロナ禍 途切れぬベトナム人労働者SOS【朝日新聞2020年9月30日】

ド・ヴァン・トゥアンさん

コロナ禍で見えた外国人問題 ド・ヴァン・トゥアンさん

コロナ禍で苦境に陥った留学生や技能実習生を助けようと、在仙台のベトナム人ド・ヴァン・トゥアンさん(39)が支援を始めて半年。同胞の若者200人以上からSOSが届き、今も途切れない。浮かび上がったのは、コロナ問題の前から外国人労働者が置かれていた厳しい環境だ。

トゥアンさんは8年前に来日し、ベトナム語通訳の傍ら、日本語教室を開くなどしてきた。感染が広がった今年春、アルバイトができずにお金が尽きた留学生や、期間が終わっても帰国できない技能実習生らに、自費で用意した食料を渡し始めた。1人コメ10キロ、段ボールいっぱいのラーメンや食用油……。これまで約90人にのぼる。

必要なのは、食べ物以上に仕事だった。

技能実習生がコロナを理由に解雇されたり、帰国できなくなったりした場合、就労可能な1年~6カ月の「特定活動」ビザが出る。ただし、以前の実習先と同一業務に就くことなどが条件だった。トゥアンさんはつてを頼って、仕事探しに奔走した。

深刻な相談もあった。劣悪な環境に耐えられずに、実習先を逃げ出した「失踪者」たちからだ。不法に働いていた仕事がコロナでなくなり、国にも帰れない。逮捕を避けるため出入国在留管理局に出頭し、短期滞在ビザを取るよう、トゥアンさんは助言。本人から電話を代わり、担当官に事情を話すこともあった。認められた例は多くはない。

住む所をなくした外国人のため、トゥアンさんは市内の1LDKのマンションを借りた。のべ7人が身を寄せた。

「今の外国人に関する問題は、すべてがコロナのせいではない。コロナ爆弾の爆発で、問題が見えるようになっただけだ」とトゥアンさん。実習生を使う企業や監理団体、留学生の通う学校がもっと外国人を大切にして、サポートしてほしいと訴える。技能実習の転職が認められていれば、失踪者の問題は起きなかったはずだという。

一方、活動を知った日本人からは、臨時雇用などの協力の申し出も相次いだ。仙台市で日本酒の輸出などを手がける福島匡紀さん(41)も、トゥアンさんの「思いに共感した」一人。留学生たちに工賃を払って和風の装飾品をつくってもらい、マレーシアやオーストラリアに輸出する準備を進める。

トゥアンさんはコロナが収まった後も、日本人と支え合っての活動を続けるつもりだ。支援の問い合わせはメールtuandovan2011@gmail.comか、電話080・9600・8686で。

(石橋英昭)