2019 年の外国人人口は過去最高【みずほ総合研究所2020年9月9日】

2020年以降はコロナ禍での減少への対応が急務

○2020年1月1日現在の住民登録を基にした外国人人口が8月に総務省から公表された。それによると、外国人人口、総人口に占める割合、前年比増加数、増加率は全て過去最高になった。
○一方、外国人人口が最も多い東京都で2019年の増加率は低かった。地方で就労が多い技能実習生が急増したが、東京都で就労する者が多い留学生があまり増えなかったことによる。
○2020年はコロナ禍で外国人人口は一転して減少が見込まれる。多くの労働力を技能実習生や留学生に依存している企業にとって今後の対応が急務である。

1.2019 年の外国人は人口、増加数、増加率で過去最高に

2020年8月5日に発表された総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2020年1月1日現在、増減などの人口動態は2019年1月1日~2019年12月31日)によると、2020年1月1日の外国人人
口は287万人で、過去最高を記録した。
また、増加数(20万人)、増加率(7.48%)、日本の総人口(日本人+外国人)に占める割合(2.3%)についても、全て過去最高を記録した。外国人の人口規模は、都道府県別人口ランキング12位の広島県(283万人)や、市町村別人口ランキング2位の大阪市(273万人)を凌駕するほど、大きな存在となっている。

外国人人口のデータが取得できる2013年以降についてその増加数を見ると、東日本大震災の影響が残った2013年を除き、2014年以降順調に増えている。
この間、日本人人口は減少が続いており、直近の2019年は▲50万人と、過去最大の減少数となっており、日本人人口の動向は外国人人口と極めて対照的である。

また、2020年1月1日の外国人人口の年齢構成を見ると、生産年齢人口(15歳~64歳)の割合は85%であり、日本人の59%よりかなり大きい。
さらに5歳階級別に見ると、外国人で最も多い年齢階級は20~24歳であり、また20歳から39歳までで全体の54%を占めている。
一方、日本人で多い年齢階級は45~49歳と70~74歳で、いわゆる団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)と団塊の世代(1947~1949年生まれ)に大きな塊があり、外国人に多い20歳から39歳までの層は21%にとどまっている。このように、外国人は日本人に比べると極めて若い年齢構成となっており、20歳から39歳において総人口における外国人の割合は5.9%と大きい。

この結果、外国人の増加は日本で進行する人口減少だけでなく少子高齢化による若年労働力の減少も緩和している。

2.2019 年の外国人人口増加率が、東京都で低く、地方で高い

外国人人口を都道府県別に見ると(図表3)、58万人と最も多い東京都が日本全体の外国人の20%を占めている。
東京都以外で10万人を超える外国人人口を抱える府県は、多い順に愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県、兵庫県と、三大都市圏に限られている。
また、外国人人口の増加数については、島根県以外の都道府県でプラスになっており、その中でも東京都が最も多い増加数を記録している。

しかし、2019年の東京都の外国人人口増加数は2018年より減少している。また、外国人人口の増加率を都道府県別に見ると、島根県(▲0.2%)、福井県(4.1%)に次いで東京都(4.6%)が3番目に低い。
一方、外国人増加率が高いのは地方で、かつ従来外国人人口の少ない県が目立つ。

地方で外国人人口が多い県は、製造業が盛んな静岡県(2020年1月1日の外国人人口9.7万人、2019年増加率+8.5%)、群馬県(同6.0万人、+6.1%)だが、増加率ランキング上位では宮崎県(同0.8万人、+19.4%)、沖縄県(同2.1万人、+17.4%)、鹿児島県(同1.2万人、+16.3%)等、外国人人口の少ない県が多い。
このように、これまで外国人受け入れ実績に乏しかった地方でも外国人受け入れが急激に進んでいる。
そこで、以下では2019年の外国人人口の増加率が、東京都で低く、地方で高い背景を考察する。

3.「留学」の伸び悩みと「技能実習」の急増の背景

東京都の外国人人口増加率が低い理由として、東京都在住者が非常に多い留学生数の伸び悩みが挙げられる。外国人の在留資格は、多い順に「永住者4」「技能実習」「技術・人文知識・国際業務5」「留学」があるが、この4つ6とそれ以外の在留資格について増加数の推移を見ると、他の主要在留資格に比べて「留学」の増加数が頭打ちになっているのがわかる。

この背景には、近年、わが国が就労目的の「留学」を厳しく制限し始めたことが挙げられる。外国人留学生の中には、出稼ぎ目的で入国し、在学中に行方不明になったり、また卒業後も不法残留してアルバイトを続けているケースが多発しているからだ。
例えば、出入国在留管理庁(当時の法務省入国管理局)は2016年に「日本語教育機関7の告示基準」を、2019年には文部科学省と出入国在留管理庁が「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」をそれぞれ策定し、在席管理、出席管理、アルバイト管理について教育機関が徹底するなどを課し、違反が続けば新たな留学生が受け入れられないようになった。

さらに、留学生の伸び悩みには、2019年から創設された新在留資格「特定技能」が影響している。「特定技能」制度の創設は単純労働分野への外国人労働者の本格的な受け入れ開始と見られている。
これまでも「留学」や「技能実習」という形で外国人が単純労働分野で働くことがあったが、留学生が学業に影響しない範囲での限られた時間で行うアルバイトや、技能実習生が出身国へ経験を持ち帰ることを前提にした国際協力の一環であり、外国人の本格的な労働という位置付けではなかった。

新制度では受け入れ外国人を労働者と位置づけ、日本人と同等以上の労働条件の確保や各種社会保険制度への適用の遵守が企業に強く求められている。

同制度では5年間で最高35万人の外国人労働者を受け入れ、特に、留学生のアルバイトに多いサービス業のうち、「特定技能」で就労が認められた飲食業と宿泊業は合わせて5年間で最大7.5万人を受け入
れる予定とされた。
さらに国は「特定技能」創設を受けて、留学生が担ってきたアルバイトを「特定技能」制度で在留する外国人に代替する姿勢を見せている。
例えば、2019年は、7カ国(中国、ベトナム、ネパール、スリランカ、ミャンマー、バングラデシュ、モンゴル)を対象に「留学」の審査が強化された。
一方、2019年において外国人人口増加への大きな寄与が期待された「特定技能」制度は、受入に必要な二国間覚書の締結があまり進展しなかったことなどから、同制度での外国人受け入れは進んでいない。

「特定技能」で日本に在留する外国人は2019年末現在で1,621人9にとどまっており、現段階では「特定技能」創設は外国人人口の増加にほとんど寄与していない。
当初、日本で就労を目指す外国人について、日本語の能力が高い者を中心に「特定技能」を目指す者が増え、「技能実習」の増加ペースは減じると考えられた。

「特定技能」が対象となる就労分野は「技能実習」と重なる部分が多く、かつ「特定技能」は「技能実習」よりも転職の自由など10有利な面があるからだ。
しかし、「特定技能」制度の運用が円滑に進んでいないため、就労を目指している外国人は、在留資格の取得が難しい「留学」や「特定技能」ではなく、比較的容易に取得できる「技能実習」の取得を目指すことになり、図表6で見られるような「技能実習」の急増につながっている。

また、技能実習生は地方での農業、製造業、建設業の従事者が多いことから、図表4と5で見られるように、その急増により技能実習生を巡る労働需給が緩和し、これがこれまで技能実習生を多く受け入れてきた地
域だけでなく、その他の地域での技能実習生の受け入れ拡大につながり、この結果、外国人人口の少ない地域での外国人人口増加率を高めたと推察される。

4.2020 年はコロナ禍の影響で外国人人口が減少

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、4月から外国人の出入国が難しくなっている。
この影響について「在留外国人統計」で2020年1月から6月までの入国超過数(再入国者以外の入国者数―出国者数)で見ると、総数(在留資格計)は3月からマイナスで、注目の「留学」は1月から6月まで全てマイナス、「技能実習」は3月までプラスであったが、4月以降はわずかにマイナスになっている(次ページ、図表7)。
「留学」や「技能実習」が4月以降大幅なマイナスになっていないのは、入国だけでなく出国も容易でなかったことが背景にある。就労目的の留学生や技能実習生にとって入国の際の借入やコロナ禍での渡航費などを考えると、出身国に帰るのが容易でないからだ。前年2019年の同じ1月から6月までの入国超過数を見ると、総数と「技能実習」は全期間プラス、「留学」は入学時期の3、4月に大幅なプラスとなっており(次ページ、図表8)、2020年1月から6月までと大きく違っているのがわかる。
入国超過数の2020年1~6月計では、総数+0.1万人、「留学」▲2.0万人、「技能実習」+1.9万人である。
4月以降のペース(4~6月の月平均で、総数▲0.7万人、「留学」▲0.2万人、「技能実習」▲0.1万人)が7月以降も続くとすれば、2020年計では入国超過数が総数▲4.3万人、「留学」▲3.2万人、「技能実習」+1.0万人となる。

一部の国に限って就労目的で長期滞在を希望する外国人の入国を認める制度「レジデンストラック」が9月から導入されたものの、新型コロナウイルス感染症への警戒もあって抑制的に運用され、入国外国人数はあまり増加しないと推察される。
このため、2020年の外国人人口は2019年までと一転して減少すると見込まれる。

5.おわりに

2019年の外国人人口は過去最高の増加数、増加率となる一方で、外国人が最も多い東京都の増加率は低かった。
その背景には、国の方針としての就労目的の「留学」の抑制がある。コロナ前から「留学」の審査が厳格化されたうえ、2020年のコロナ禍も相まって、今後も留学生の増加はあまり期待できない。

また、本格的な外国人労働者の受け入れを可能にした「特定技能」制度において、小売業などへの対象産業の拡大が期待されるものの、目途がたっていない。

コロナ禍で留学生の主な就労分野の一つである飲食業などのサービス業は大きな影響を受けているため、現段階で外国人留学生減少による労働力不足が深刻化していないが、アフターコロナを考えると、留学生に労働力を依存している業種や企業は今後の留学生の減少への備えが必要である。

特に、留学生は東京都で就労する者が多いことから、東京都のコンビニや飲食業などでは今後の対応が急務といえる。
一方、「特定技能」制度による外国人の受け入れが軌道に乗らなかった影響で地方において2019年に「技能実習」が急増したことから、地方の人口減少の緩和への期待が高まった。

しかし、2020年のコロナ禍で技能実習生は一転してほとんど入国できなくなったため、日本人の若年労働者の採用が難しく、技能実習生を必要不可欠な労働力と期待している地方の農業、製造業、建設業などは技能実習生の減少への対応に追われている。
現在、国は例外措置としてこれまでの在留資格が切れた外国人に対し、期間限定の就労が可能になる「特定活動」への資格変更を認めており、コロナ禍で大きなダメージを受けた企業からそれ以外の企業への外国人の転職を進めている。

しかし、ウィズコロナが長引き、外国人人口の減少が続けば、留学生や技能実習生など外国人労働者への依存度が高い企業は大きな影響を被ると推察される。

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl200909.pdf