農業の外国人材 経営を支える仲間として【信毎web2020年8月16日】

昨年4月にできた新しい在留資格「特定技能」で滞在する外国人に、働く場を広げてもらう試みが県内の農業現場で始まった。

季節による農作業の繁閑に合わせて移動し、夏は長野県、冬は長崎県で野菜や果樹の作業をする。農協グループなどの企画で、今後、他の地域とも連携する構想があるという。

試みが注目されるのは、規模の大きな農家が農繁期に外国人の手を借りないと経営を維持できなくなっているからだ。茨城県や長野県の野菜産地などに多い。

通年で働くことができれば外国人にもメリットは大きい。

これまで農家は、「技能実習」で来日した外国人に労働力を頼ってきた。本来は、途上国の人が日本で技術を習得し母国の発展に役立てる国際貢献の制度である。

農業のほか製造業などでも労働力確保を狙った利用が常態化し、賃金不払いや長時間の拘束といった人権問題が多発していた。失踪した実習生も少なくない。

一方、特定技能の制度は、外国人を正面から労働者と位置付け、日本人と同等以上の報酬などを定めた。今回のような取り組みが充実していけば、労働力の安定確保につながる可能性もある。

ただ、制度開始から1年の今年3月末時点の在留人数は、全国で3987人にとどまった。政府が見込んだ4万7550人の10分の1にも満たなかった。

人手不足を訴える経済界の要望に応えようと、急ごしらえの制度を見切り発車した結果だ。

大きな問題は、技能実習の仕組みがそのまま残った点だ。技能実習には原則として転職の自由もなく、雇用者側が一方的に使いやすい制度だ。廃止し、特定技能に統合していくのが筋ではないか。

大規模化が進んだ野菜産地などでは長く、労働力の確保が大きな課題になってきた。かつては日本人のアルバイトを確保できた。次第にきつい仕事が敬遠され、今では外国人が主力になった。

特定技能の創設は、ごまかしに満ちた従来の外国人労働者政策からの転換の一歩にも映る。だが政府は今も、「移民政策は採らない」との考えを維持している。

透けるのは、社会の構成員として受け止める発想の希薄さだ。結局はその場しのぎの労働力と捉えている。改めて抜本的な受け入れ論議をする必要がある。

農業の現場で重要なのは、経営を支える仲間として迎えていく視点だろう。欠けていては、安定的な関係を築くことはできない。