【地方再生・創生論 175】「特定技能」制度の活用を 日体大理事長 松浪健四郎【観光経済新聞社2020年7月25日】

私は、「出入国在留管理庁」なる役所のあることを知らなかった。
2019年4月、法務省の「入国管理局」が格上げして発足したのだ。
18年12月、「入国管理法」が改正され、深刻な農漁業、建設業などの人手不足を解消すべく、外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、入管局では対応できないと考えられ、新しい役所が誕生したのだ。

初代長官は、佐々木聖子氏。肝っ玉母さんの印象を与えてくれる女性。二階俊博自民党幹事長がベトナムを訪問される際、長官も同行された。
幹事長がフック首相と会談し、両国の人事交流について話し合うための同行であった。
ベトナム人が、現在、日本に27万人駐在する。多方面で活躍してくれているのだ。

外国人労働者の受け入れ拡大の起爆剤として、入管法改正で「特定技能」が創設された。
私は、入管法改正は人口減少に苦しむ政府が移民策容認へ軸足を移したと勝手に解している。
この国の経済を維持するためには、労働者不足を解消せねばならない。
「移民」と表現すれば、国民たちが拒否反応を起こすゆえ、「特定技能」というオブラートに包んだのだ。

「特定技能」とは、まず一定の知識や経験を必要とする1号(在留期間は通算5年)がある。
この1号は、技能試験と日本語試験に合格すれば取得できる。
3年の技能実習を終了すれば、無試験で2号に移行できるルール。
政府は労働者不足に頭をかかえる14業種での受け入れを決めたが、ハードルが高いのか資格取得者が伸び悩んでいる。
日本語試験がネックなのだろうが、日本社会に溶け込むためには必修であろう。
移民政策の一環なのだから。

しかし、「特定技能」の申請者が少ないと法改正が意味をもたない。
「特定技能」者の受け入れ人数を見込み、態勢整備をしていた経済界や各自治体はショックを受けるしかなかった。
初年度の受け入れ、まだまだ希望する外国人には伝わらなかったかもしれぬが、新型コロナウイルスの影響も大きかった。

法改正してまで外国人労働者を受け入れようとする政府と業界、コロナ禍だけを申請者減少の原因と決め込んではならない。
課題を発見し、手を打ち「特定技能」の制度を生かすべきである。
この制度は、日本経済の将来を左右するだろうし、地域社会の発展とも深い関係があろう。

外国人労働者から日本という国がどのように映っているのか、十分な調査研究が求められる。
「特定技能」の制度を活用し、協力を得て日本社会を元気にしてほしいものだ。
賃金、収入だけの問題ではなく、日本で生活する魅力もなければならない。
ましてや差別を受けるようでは、日本社会の魅力は失する。

「外国人」という認識だけではなく、日本に住む仲間という意識が必要であろう。
互いに支え合う大切な仲間なのだ。
「特定技能」者はともかく、技術実習を受けた外国人が、異なった分野の職に就けないルール。
留学ビザの審査が厳しくなっているという声。日本は厳格すぎて息苦しくなると耳にする。
ハードルが高過ぎれば、日本を目指す外国人は増加しない。しばらくは、甘いルールも必要だ。

また、外国人労働者であろうとも、能力主義の導入も大切だ。
いつまでも駒の扱いをされていたのでは、能力ある人材は消えていく。
大企業にとどまらず、小さな会社でも近年は多国籍社員をかかえる。
単純労働にとどまらず、責任ある部署での起用も考慮すべきだ。

日本を目指す外国人の一番の問題は、悪質な海外ブローカーの存在。各国にある大使館や領事館は、日本の入管法をよく説明し、ブローカーの手を経ずに日本へ行ける策を授けてほしい。
このブローカーの存在が、大企業を尻込みさせていて、せっかくの制度を生かせずにいる。
大金をブローカーに取られるという。

わが国の人口減少は避けられない。
外国人労働者に依存するしかない。各自治体は、「特定技能」制度を理解しているだろうか。
やがて定住してくれる2号資格取得者を囲い込むべきだ。ただ、2業種にしか2号を認めないのは問題だ。