「パスポート返したら、逃げるでしょ?」外国人が見た日本企業の闇【withnews2020年7月24日】

(イラスト・逸見恒沙子)

(イラスト・逸見恒沙子)

  • パスポートはあなたのものです
  • 会社をやめたとき
  • 「強制労働」が蔓延する日本

日本語にほんごにまだ慣なれていない人ひとにも、分わかりやすい「やさしい日本語にほんご」で書かきました。
下したに「ふりがな」を消けした文ぶんがあります。

こんにちは。POSSEの岩橋いわはし誠まことです。
今回こんかいは「会社かいしゃがパスポートを返かえしてくれません」という相談そうだんについて考かんがえます。
パスポートは外国人がいこくじんにはとても大切たいせつなものです。
でも、あなたが辞やめないように、会社かいしゃがパスポートを持もつことも多おおいようです。
今日きょうはそのような相談者そうだんしゃです。

パスポートを返してほしいです

ブレンダさんの悩なやみ
【フィリピン出身しゅっしん、女性じょせい、ブレンダさん(仮名かめい、30歳さい代だい)】
私わたしはフィリピンの大学だいがくで、観光かんこうを勉強べんきょうしました。
私わたしはフィリピンで事務じむの仕事しごとをしていました。
でも、家族かぞくが日本にほんに住すんでいたので、日本にほんで働はたらこうと思おもいました。

私わたしは東京とうきょうの日本語にほんご学校がっこうに2年ねん間かん通かよいました。
そして、日本語にほんご学校がっこうを卒業そつぎょうしました。

私わたしが仕事しごとを探さがしていた時ときに、友ともだちが横浜よこはまにある行政書士ぎょうせいしょし事務所じむしょを教おしえてくれました。
行政書士ぎょうせいしょし事務所じむしょには、私わたしはアルバイトとして入社にゅうしゃしました。
私わたしの仕事しごとは通訳つうやくと翻訳ほんやくでした。

会社かいしゃは私わたしのビザを留学りゅうがくビザから就労しゅうろうビザに変かえるといいました。
私わたしはパスポートを会社かいしゃに渡わたしました。
そのときに、私わたしは「パスポートの管理かんりに関かんする契約書けいやくしょ」にサインしました。
契約書けいやくしょは日本語にほんごだったので、あまり分わかりませんでした。
でも、私わたしは会社かいしゃを信頼しんらいしていたので、サインしました。
ビザの手続てつづきが終おわったときに、会社かいしゃは私わたしのパスポートを私わたしに返かえしてくれると思おもいました。

働はたらいて2ヶ月かげつして、私わたしは就労しゅうろうビザをもらいました。
ビザの手続てつづきは終おわりました。
でも会社かいしゃは私わたしのパスポートを、私わたしに返かえしてくれません。

私わたしが「パスポートを返かえしてください」というと、会社かいしゃは「会社かいしゃが預あずかります」といいます。
会社かいしゃは私わたしに「パスポートをあなたに返かえすと、あなたは会社かいしゃを辞やめて、逃にげてしまうから」と言いいました。

そこで、私わたしはサインした契約書けいやくしょを見みました。
そこには「パスポートの管理かんり方法ほうほうはすべて会社かいしゃが決定けっていする」や、「パスポートは退職たいしょく後ごも会社かいしゃが管理かんりする」と書かかれていました。

私わたしはすごく怖こわくなりました。

パスポートは私わたしのものです。このままでは、フィリピンに帰かえることができません。
仕事しごとを変かえることもできません。どうすればいいですか。

パスポートはあなたのものです

まず、パスポートはブレンダさんのものです。会社かいしゃのものではありません。

ブレンダさんが会社かいしゃに「返かえしてほしい」と言いったら、会社かいしゃはブレンダさんにパスポートを返かえさないといけません。

日本にほんには、ブレンダさんと同おなじように、会社かいしゃにパスポートを取とられて、困こまっている外国人がいこくじんがたくさんいます。

国くには、会社かいしゃが働はたらく人ひとのパスポートや在留ざいりゅうカードなどを保管ほかんしないでくださいと言いっています。
事業主は、外国人労働者の旅券等を保管しないようにすること。

厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」

また、もし「技能ぎのう実習じっしゅう生せい」であれば、会社かいしゃがパスポートを預あずかることは法律ほうりつ違反いはんになります。
技能実習生の旅券または在留カードを保管してはならない。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 第48条第1項

でも、「技能ぎのう実習じっしゅう生せい」ではない人ひとについては、法律ほうりつがありません。

会社をやめたとき

ブレンダさんが会社かいしゃを辞やめたときは、会社かいしゃは7日にち以内いないにブレンダさんのものを全部ぜんぶ、ブレンダさんに返かえさないといけません。
これは、労働ろうどう基準法きじゅんほうという法律ほうりつで決きまっています。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

労働基準法第23条

誰かに相談してください

会社かいしゃがパスポートを返かえしてくれないときは、すぐに誰だれかに相談そうだんしてください。

NPO法人ほうじん「POSSE(ポッセ)」はメールで相談そうだんできます。日本語にほんご、英語えいごでも大丈夫だいじょうぶです。24時間じかんいつでもできます。お金かねはいりません。supportcenter@npoposse.jp

ブレンダさんは、”HelpMe”というメッセージをフェイスブックでPOSSEに送おくりました。

POSSEは、ブレンダさんに労働ろうどう組合くみあい(ユニオン)に入はいることを勧すすめました。
労働ろうどう組合くみあいは、働はたらく人ひとたちが集あつまって、働はたらく環境かんきょうを良よくするための団体だんたいです。

例たとえば、給料きゅうりょうを上あげることを、会社かいしゃに求もとめることができます。また、「外国人がいこくじん差別さべつをやめて」や、「パスポートを返かえして」と会社かいしゃに求もとめることもできます。

ブレンダさんは労働ろうどう組合くみあいと一緒いっしょに、会社かいしゃに行いきました。
でも、会社かいしゃはパスポートを返かえしませんでした。
労働ろうどう組合くみあいと話はなし合あうことも拒否きょひしました。

そこで、ブレンダさんは、いまパスポートを返かえしてもらうために、裁判さいばんをしています。
裁判さいばんにはお金かねがかかるので、クラウドファンディングで集あつめています。

「強制労働」が蔓延する日本

「まさか日本でこんなことが」と思われる方も少なくないと思いますが、この事例は、ブレンダさんの名前を仮名にしている以外は、全て事実をもとに書いています。

ブレンダさんは、昨年(2019年)7月中旬以降、この会社には出勤していませんが、ブレンダさんのパスポートは、1年経った今でも、会社が保管しています。

そこで、ブレンダさんがパスポートを取り返すために、POSSEは寄付やクラウドファンディングを通じて裁判費用を募りました。
そして、ブレンダさんは今年1月、パスポートの返還や慰謝料を求めて、行政書士事務所を訴えました。

しかし、これまであまり問題化されていなかっただけで、そもそも、外国人労働者のパスポートを会社が保管することは、「強制労働」につながる深刻な事態だと世界的には考えられていました。

例えば、国際労働機関(ILO)は、強制労働を「ある者が処罰の脅威の下に強要され、かつ、右の者が自ら任意に申し出たものではない一切の労務」と規定した上で、「旅券や身分証明書を預かることは移民労働者に対し強制の要素を生じるさせるおそれがあります」と書いています。

実際、労働者のパスポートや身分証明書を会社が「預かる」ことで、様々な弊害が生じます。

日本国籍保持者が日本国内で働く時にパスポートは不要ですが、外国人労働者の場合、転職先にパスポートを提示しなければいけません。
パスポートがなければ転職することができず、そのため、今の職場が低賃金でハラスメントが蔓延する劣悪なところだったとしても、「我慢」して働き続けることを強制されてしまいます。

しかしながら、日本では、会社が外国人労働者のパスポートなど身分証明書を預かることを禁止すらされていません。
預かる行為が違法ではないため、国が介入することが困難です。
つまり、ブレンダさんはまさに自分自身で取り返すしかないのです。

ただ、外国人自身が1人で裁判をすることは非常に困難です。
言葉の壁だけでなく、実際に裁判費用を負担するだけの経済力がなければいけません。
また、「誰かに言ったら国に返す」などの会社から脅しをされることもあります。
そのような状況を変えるために、人権侵害の被害に遭っている外国人を、NPOや労働組合をはじめ社会全体で支援していくことが求められています。

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外国人がいこくじん向むけ労働ろうどう相談そうだんホットラインをします!
コロナウイルスのせいで、仕事しごとがない人ひとや、お金かねがない人ひとは電話でんわしてください。
・コロナウイルスのせいでお客きゃくさんが減へって、仕事しごとをくびになった。
・お客きゃくさんが減へって、シフトがなくなった。
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・家いえで働はたらきたい。
・お金かねがない。
2020年ねん7月がつ25日にち土曜日どようび午後ごご1時じから午後ごご5時じ
電話でんわ:0120-987-215
メール: supportcenter@npoposse.jp(いつでも)

※日本語にほんご、英語えいご、中国語ちゅうごくご、タガログたがろぐ語ご、モンゴルもんごる語ご、フランスふらんす語ご、オランダおらんだ語ご、アラビアあらびあ語OKご

※相談そうだんは0円えんです。秘密ひみつは守まもります。

主催しゅさい:NPO法人ほうじんPOSSE外国人労働サポートセンター

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