新型コロナウイルスの影響で雇用環境が悪化 外国人の就職活動、活路はどこに【産経新聞2020年7月14日】

【粂博之の経済ノート】

新型コロナウイルスの影響で雇用環境が悪化し、中でも外国人は厳しい状況に置かれている。
インバウンド(訪日外国人客)を迎えるスタッフとして引く手あまただった時期と比べると求人は激減し、工場では観光業などで解雇された日本人との競争になっているという。
人口減の進む日本には外国人労働者を引き寄せることが不可欠とされるが、現状では根付かず流出している。

 ■しわ寄せ

「急に会社を辞めさせられた」「寮を出ないといけないけど、住むところがない」。
外国人材紹介のアクセスHR(大阪市)には、フェイスブックを通じて深刻な相談が寄せられる。
「解雇した企業やその労働組合が支援すべきだが、大体は『あとは自分でなんとかしろ』と放り出すだけ」と同社の前川聡社長はあきれ返る。
「外国人に親身になるのは、従業員と距離が近い、どちらかというと規模の小さな企業の方が多い」そうだ。
日本にとどまりたいという人たちは、同郷の友人の部屋や、外国人支援に取り組む団体などが整えたシェルターに身を寄せている。
同社では、困窮した外国人を支援団体などにつなぎ、それから就職活動の支援に移ることになる。

 厚生労働省によると、新型コロナの感染拡大に関連した解雇や雇い止めは、見込みを含めて7月1日時点で約3万人。
この1カ月で約1万人増えた。
業種別では、ホテルや旅館の宿泊業が多く、飲食業、製造業などが続く。
前川氏によると「観光や飲食業界を辞めた日本人が、食品加工場など外国人の多かった職場に流れ込んでいる」という。
そうした中、アクセスHRでは、人手不足が深刻な介護分野を外国人に勧めている。
前川氏は「日本に定住する道も開ける。経験を積めば、ベトナムなどでは帰国後に給料の高い日本企業で働くチャンスも生まれる」と説明している。
ただ、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の両方に合格する必要がある上に「仕事の要求は細やかで厳しい。人気が高い職種ではない」。帰国を決断する求職者も少なくない。

 ■地方にチャンス

「これで大好きな日本に居続けられる」と笑顔をみせるのは、イタリア出身で東京都荒川区に住むロベルタ・ルッジェリさん(30)だ。
9月から和歌山県白浜町の旅館で働くことになった。
外国人の就職・採用をサポートするクロボ(大阪市)を通じて求人を知り、オンライン面接を経て内定を獲得したのだ。
イタリアの大学で日本語を勉強したルッジェリさんは、昨年春に来日し日本語学校に入学。今年3月に卒業した。ようやく就職というところでのコロナ禍。
英語、イタリア語、フランス語などの語学力をセールスポイントに商社などの面接までこぎ着けたが、いずれも直前にキャンセルされ、苦しい日が続いた。
アルバイトをやめざるを得なくなり、収入は途絶えたが、内定でようやくひと息つける。
「都会から地方の観光地に移ることに抵抗感はない。これからの研修が楽しみです」という。
ルッジェリさんは苦労したとはいえ、運が良かった。
「日本語学校の友達はあきらめて次々に帰国してしまった」という。
今年3~6月、コロナの影響を受けてクロボに相談した外国人は589人で、うち就職が内定したのは11人にとどまる。
それも同社がクラウドファンディングで得た資金をもとに、人材紹介の手数料をゼロにするキャンペーンを展開した結果だ。

 ■人手不足は続く

外国人の雇用情勢は厳しいが、クロボの北氏智弘社長によると「新型コロナの感染収束後に備えて採用したいという企業はある」。
特に観光業界では、自然や伝統文化への関心が高い欧米からの観光客に対応できる人材が求められている。
長らく人手不足に悩まされてきた地方のホテルなどは、今がチャンスかもしれない。
また、新型コロナの影響をあまり受けていないマーケティング企業、需要が伸びているデリバリー関連などの求人は比較的安定しているという。
クロボは、こうした情報を他社と共有することで、マッチングの効率を少しでも高めていく考えだ。
コロナの影響が収束に向かえば「一度帰国した外国人労働者も日本に戻ってくれるのでは」とアクセスHRの前川氏は期待するが、日本で感じた不安や“仕打ち”はどう響くだろうか。
クロボの北氏氏は「稼ぐだけが目的ならシンガポールなどの方が有利。
それでも日本で働くという人は、日本に魅力を感じているから。しかし、このままでは…」と表情を曇らせる。(経済部編集委員 粂博之)

イザ!

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