連夜のカラオケ、マッサージ…接待のツケは技能実習生に【朝日新聞2020年7月6日】

外国人技能実習生として日本で働いたことのあるベトナム人の男性(28)と知り合った。SNSを通じて知人に紹介してもらって2カ月。
新型コロナウイルスの感染が収まった6月6日、ハノイのカフェでようやく会えた。

男性は千葉県内のクリーニング会社で実習生として1年間働き、2016年にベトナムに戻った。
帰国後も勉強を続け、日本語能力試験の上級「N2」に合格。今は実習生を日本に送り出す人材派遣会社で日本語教師として働いている。

「日本に行って一番良かったのはどんなことですか?」

私の何げない質問に男性は「景色です」と答えた。桜や富士山など滞在中に見た風景を懐かしそうに教えてくれた。
しかし、話を続けるうちに男性が日本に抱く複雑な気持ちを感じた。本音だと思えるこんな言葉を聞いたからだ。「日本人との関係は難しい」

日本にいた時だけでなく、今の仕事でもそう感じるのだという。

男性の会社から実習生を受け入れる日本の企業関係者は、ベトナムまで候補者の面接に来る。
男性はその際、通訳を兼ねて接待の案内係をさせられる。ゴルフや食事、夜のカラオケやマッサージ……。
「気に入らなければ怒られる。建設会社の社長を一週間、毎晩接待した時は一番ひどかった」

過剰な接待は以前から実習生制度の問題として指摘されている。
人手不足で外国人労働者を必要としているのは日本だ。
どうしてベトナム側がそこまでしなければならないのか。「接待をしないと他の会社から採用すると言われる」。それが男性の答えだった。

負担は実習生に回ってくる。ベトナムの派遣会社が払った接待費はいろいろな名目で実習生の手数料に上乗せされる。
その結果、日本に行くための費用は国の規定額を大幅に超え、実習生はそれを支払うために借金を背負う。
もともとの賃金水準の低さに加え、借金返済のために給料の高い仕事を求めることが、日本での失踪につながる。

昨年末時点で日本に滞在するベトナム人は41万人。10年で10倍に増えた。男性の体験が、深まる日越関係の現実だとすればあまりに寂しい。(ハノイ支局 宋光祐)

朝日新聞デジタル

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