外国人技能実習 雇用の調整弁許されぬ【北海道新聞2020年7月8日】

新型コロナウイルス感染拡大で雇用情勢が厳しくなる中、外国人技能実習生が失業したり、勤務を減らされる例が相次いでいる。

 監督機関の外国人技能実習機構は実習生の保護に努め、実習先への監視の目を光らせてほしい。

 農業や介護の現場などでは新型コロナの影響で実習生が来日できず、人手が不足している。
このため出入国在留管理庁は就労継続を望む実習生の他職種への転職を認める特例措置を出した。

 だが技能実習は本来、日本の技術を習得し母国の経済発展に生かしてもらう国際貢献が目的だ。
人手不足の穴埋めに利用するのでは国が自ら雇用の調整弁だと認めたことにならないか。

 劣悪な労働環境がたびたび指摘される技能実習を廃止し、多文化共生社会の視点から外国人労働者の権利を保障した制度設計の再構築が急がれよう。

 実習生の多くは借金をして現地の送り出し機関に多額のお金を払って来日している。
お金を稼がないと帰国できない事情がある。

 実習生らの支援を行うNPO法人には製造業で働く実習生からまだ契約があるのに「国に帰れと言われた」「退職を勧められた」との相談が相次いでいる。

 企業の都合で立場の弱い実習生を切り捨てるのは許されない。

 政府は実習先に雇用調整助成金を活用し、雇用を継続するよう促すべきだ。
休業手当を受け取れない中小企業の労働者に対する新たな給付金制度も今月始まる。実習生も対象で直接給付される。

 特別定額給付金も帰国困難な実習生らに対象が広がった。支援策を周知徹底し、救済の手を差し伸べなければならない。

 入管庁によると、実習生の失踪は年々増え、2018年は9052人に上る。賃金の不払いや時間外労働などの不正が背景にある。

 昨年11月、入管庁は失踪者の出た実習先で賃金不払いなどの違法性が認められれば、受け入れを停止させる対策を打ち出した。
しかし、実習生が使い捨てられる実態は今も変わらぬままだ。

 外国人労働者の受け入れを拡大する昨年4月施行の改正入管難民法では新在留資格「特定技能」が導入され、実習生の移行が多く見込まれている。

 だが特定技能は人手不足が解消すれば受け入れは停止され、家族の帯同は認められていない。外国人を「人」でなく「労働力」としてしか見ていないようでは「選ばれる国」にはならないだろう。