外国人に防災教育 西日本豪雨教訓、雇用企業が推進【岐阜新聞2020年7月8日】

「多言語防災ガイドブック」を使い、ベトナム人技能実習生に防災情報を伝える羽田野芳弘部長(左から2人目)ら=郡上市八幡町稲成、郡上合板

「多言語防災ガイドブック」を使い、ベトナム人技能実習生に防災情報を伝える羽田野芳弘部長(左から2人目)ら=郡上市八幡町稲成、郡上合板

西日本豪雨から2年。岐阜県内の被災地域などでは外国人労働者に対する防災教育が進められている。
地域で暮らしながら働く技能実習生らは日本語でのコミュニケーションが困難な上、多くが自治会に加入しておらず自主防災組織との連携もないため、当時は孤立するケースもあった。
受け入れ企業は緊急時に備え、防災意識を高める教育に手探りで取り組んでいる。

「やばい こうずい こわい」。2018年7月7日夜から8日未明に降った記録的大雨により、津保川が氾濫し、浸水被害が発生した関市上之保地区。当時、同地区の木工製造会社で働いていたインドネシア人技能実習生(28)は、通信アプリ「メッセンジャー」で助けを求めた。
市の緊急速報メールが次々に届いたが、「避難指示」「土砂災害警戒情報」などの日本語が理解できない。
会社近くにあるアパートは1階が浸水し、2階に住むアジさんは逃げ場を失った。

「避難場所、分からない。会社の人から逃げ方、教えてもらってない」と焦り、不安が募った。
ベランダで助けを待っていたところ近隣住民に声を掛けられ、避難所に連れていってもらうことができた。
当時、アジさんからSOSを受け取った関市外国人支援センターのタパまどか代表(32)は「企業は仕事の教育に手いっぱいで、避難場所や災害時の連絡方法などの周知までは手が回っていなかった」と振り返る。

外国人労働者に防災情報を伝える取り組みは、決して十分とは言えない。
外国人材受け入れ監理団体が、入国直後の技能実習生向けに行う法定講習では、地震時の消火対応など住宅火災への備えを教えるにとどまっている。
県国際交流センターは、防災情報を中国語やベトナム語など5言語に翻訳して作成した「多言語防災ガイドブック」を各市町村の窓口に置いてはいるものの、「必要とする外国人の手元に届き、読んでもらっているかまでは把握できていない」(同センター担当者)のが現状だ。

こうした実態を受け、技能実習生を雇用する企業が積極的に防災教育を進める動きが出てきた。
当時、記録的な大雨に見舞われた郡上市で家具の木材加工部品を製造する郡上合板(同市八幡町稲成)は昨年7月にベトナム人技能実習生の受け入れを開始。
「水害が発生しやすい時期に合わせた、実習生対象の防災教育が必要」(羽田野芳弘部長)と今年6月26日に初めて防災指導を行った。

会社前を流れる長良川の現在の様子と2年前の豪雨時の写真を見比べながら、水位の上昇や河川の濁りが水害のサインであることを伝えた。
避難所まで案内し、緊急時は「私を避難所に連れて行って下さい」と書かれたガイドブックを広げて周囲に助けを求めることも教えた。
実習生(30)は「川怖い。泳げるけど、たくさんの雨の日は川行かない。
避難所の場所、分かって安心です」と話していた。