外国人実習生、コロナ禍直撃 勤務激減・在留期限切れ逮捕 制度にひずみ【北海道新聞2020年7月3日】

道南のベトナム人技能実習生の4月(右)と5月(左)の給与明細。5月の手取りは明細に含まれない経費の割り戻しを合わせ、4万円台だった
道南のベトナム人技能実習生の4月(右)と5月(左)の給与明細。
5月の手取りは明細に含まれない経費の割り戻しを合わせ、4万円台
だった。

 新型コロナウイルス感染拡大で雇用情勢が厳しさを増す中、道内で働く外国人技能実習生にも影響が広がっている。
一部の実習生は勤務を減らされ、月収が激減して困窮状態に。道外の人材派遣会社が失業した実習生らを集め、人手不足に悩む道内の農家に送り込んだ結果、在留期限切れで逮捕される事件も起きた。
実習生が人手不足や事業が好調な時だけ労働力として期待され、「雇用の調整弁」として扱われる実態が浮き彫りになっている。

 「月収3万円でどう生活すれば良いのか」。道南の食品加工場で働くベトナム人実習生の20代女性は6月初め、不安げに語った。
2017年の来日以降、今年4月までは平日に8時間働き、月収10万円だったが、食料品の出荷が落ち込んだ5月の大型連休後、週2日勤務になり、収入は激減した。
会社側に天引きされていた必要経費の割り戻しを受けても、手元に残ったのは4万円台だった。

 母国の家族4人への仕送りは3万円で、残り1万円が女性自身の生活費という。
「スーパーで週1回、キャベツや豚肉などを約3千円分買い、3食自炊する」という寮生活。
ベトナムへの航空便は途絶え、日本に残るしかなかった。

 技能実習制度の目的は労働力確保ではなく、日本で学んだ技術を母国で生かしてもらう国際貢献
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(東京)には、感染拡大の影響が顕著な全国の製造業などで働く実習生から、契約期間が残っているのに「国に帰れと言われた」「退職を勧められた」との相談が相次ぐ。
鳥井一平代表理事は「実習生が使い捨て労働者のように扱われ、制度が実態に見合っていない」と話す。

 北海道労働局によると、道内の実習生は年々増え、昨年10月末現在で過去最多の約1万3千人。
17年11月施行の外国人技能実習適正化法は、技能実習について「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記する。
だが、感染拡大で雇用はより不安定となり、労働現場に制度のひずみが生じている。

 名寄市の複数の農家は4月下旬、中国人実習生51人を受け入れる予定だったが断念。
その後、地元農協は、群馬県の人材派遣会社から「コロナの影響で失業した外国人を雇ってほしい」と連絡を受け、元実習生ら12人を受け入れた。
そのうちベトナムとインドネシア国籍の3人の在留期限切れが判明し、5月上旬に入管難民法違反(不法残留)の疑いで道警に逮捕された。

 道内では農家の担い手が足りず、実習生に頼る実情がある中、今年は既に全道で農業関係の実習生200人弱の来日が取りやめに。
群馬県の会社は、失業した外国人の就労先として人手不足の農家への派遣を進める中、在留カードのチェックを怠ったとみられ、捜査関係者は「労働力不足を補う形で不法就労がさらに増えかねない」と警戒する。